【学ベビ】おおかみさんの云う通り(2)【狼谷】

噛みつくことのお話 ページ12

化粧品がそろそろ無くなってきたので買いに行くと、いつもは目にとまらない新商品の棚が見えた。気になり近付くとそれはティントリップというもので、口紅に近いが口紅と違って染み込ませて発色するので長持ちするし色もいいという。あまり化粧品にはこだわらない質だがそういえばそろそろ口紅も無くなりそうだったな、と思い出しそれもついでに購入した。新しい化粧品って、ワクワクするよね。

家に帰って早速使ってみる。私はあまり濃い色の口紅は自分には合わないと思っているのでそこまで色味は強くないローズピンクと言うのにしてみた。どんな色なんだろ。

この商品のパッケージには「思わず噛み付きたくなるジューシーな発色！」なんて書いてある。最近の広告はこういうフレーズ考えないといけないから大変だよね…私は語彙力がないから全く考えつかない。またリップ本体の柄はピンクや白の小柄な花が散りばめられていた。パッケージにはわざわざ「花麒麟の柄付き！」なんて書いてあるんだけどこれ書く必要あっただろうか。花麒麟なんて聞いたことのない花の名前だ。でもまあ可愛いからいっか。

唇をしぱしぱとして均等に伸ばし鏡で見てみる。…これはなかなかいいんじゃない？そこまでテカテカしている訳でも無く、かといってどぎついピンク色でもない、丁度良い発色。我ながらいい買い物をしたな。

そうだ、隼くんに見せてみよう。…まあそこまで反応を期待している訳ではない。だってそういうの疎そうだし。特に連絡をした訳ではないのでいなかったらいなかったでしょうがない、また今度見せびらかそう。

丁度よくバイト先の子から貰った外国のお菓子があることを思い出し、その手土産を持ってピンポン、とチャイムを鳴らす。暫く待つと割とすぐに出てきてくれた。不思議そうな顔をしている彼にやっほ、と声かける。


「特に用事はないけど来ちゃった」
「はあ…？まあいいけどよ…」
「手土産持ってきたから許して！友達からのお土産だけど」
「また人からのかよ」


今更のことなのでもう気にしない。うーん、今のところ何も気付いてないみたいだ。ただこの前みたいにガン見すると違う意味で捉えられちゃうからそれは出来ない。さりげなく気付いてもらうか、気付かさなければ。

友人から貰った外国のお土産は、まあ私の友人だ、変なものしか買ってこない。言っちゃ悪いがつまるところめちゃくちゃ不味そう。机に並べたはいいが食べる気はしない。隼くんもヤバいだろこれと呟いた。

2→←3

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す