82話 ページ38
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ローグタウンで無理矢理にでも連れ出して正解だったと、しみじみ思う。
くいなの葬式の日。うずくまってばかりで泣きもしなかった。くいなの顔もまともに見ないまま、ふらふらとおぼつかない足取りで帰っていく背中は今でも覚えている。
後になって、くいなの死を唯一目の前で見たのがAだと、道場の先生から聞いた。
誰がどう見ても、傷付いていた。
初めて目の当たりにする�犹爿瓩函△修譴�一番の友達だったくいなの死であることと、手が届かなかった後悔と。
まるで死に場所を探すように村を出て、どんな旅をしていたのかは分からない。
だが、魚人島での拘束され慣れている様子や発言から、旅人だからといって穏やかな旅路だったかと言われれば一概に是と言えない雰囲気があった。
_______『くいなちゃん』
初めてあの大佐を見たときの声は、あまりにも感情がごちゃ混ぜの声で。
あァ、まだくいなのことで泣けていないのだと。
まだ、あの日の光景が離れてくれないのだと。
「あ、ぁああ……っ！！」
「……」
「く、ぃな……っぁああ！！」
ようやくあの日泣けなかった分を泣けたのかと、少し安堵の息が漏れる。
最初はまた何か一人で悩んでいるなと思っただけだが、あの大佐と鉢合わせしたときに全てを理解した。それと同時に、うまくいけばこうして泣けるかと思い付いた。
A自身が自ずと動いていたので手出しの隙がなかったが、結果として大成功で、こうしてあの日したかったことが出来たことへの少しの達成感を噛み締める。
泣いていることを隠したいなら、おれが隠してやる。
声を聞かせたくないのなら、おれが人のいない場所へ連れていってやる。
だから一人で泣くな。
出来るなら、おれがいる場所で泣け。
そう、言いたかった。してやりたかったんだ。
……あの日本当にしたかったことが出来たのは、こいつだけではないらしい。
雪の上に染みていく滂沱の涙を親指で拭って、上を向かせる。
船に乗ってからずいぶん泣くようになったと思っていたが、それが仲間がいることへの安堵感からなら構わない。いくらでも泣いて、ナミやロビンに縋り付けばいい。
_______それでも、この涙を拭えるのはおれだけだ。
交わった目の潤んだ輝きに惹かれるように、顔を寄せる。逃げる様子もなかったのでそのまま触れ合えば、震えた手がおれの手首に縋り付いた。
拒絶ではないと語る直感に従ってもう一度重ねれば、握る力が強まる。その手を掴んでおれの首へと誘導すれば、大人しく首に手を回した。
遠くで、宴の音が響いていた。
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