81話 ページ37
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「ぅ……っ、ぁ、あ」
くいなちゃん。死んでしまった、私の友達。
「ぅ、う"……っ！！」
くいなちゃん。抗えなかった、守れなかった、私の従姉妹。
私にとって、くいなちゃんが私を守ってくれる人だった。
強くて豪胆で、優しくて繊細な女の子。
年上だからと強がり切れなくて、刀が怖いと泣く私を慰めて守ってくれた子。
例えいつかゾロくんがくいなちゃんより強くなったとしても、きっとそれは変わらなかったと今でも思う。死ぬ運命であっても、私はあの子が大好きだから。
ゾロくんは少し手のかかる男の子で、いつか巣立つと分かっていた子だった。きっとすぐに離れて、忘れていくだろうと。
だから、くいなちゃんが死んで、巣立っていくゾロくんしかいなくなったとき。
_______私は、独りになるのだと思った。
守りたい人も守れず、来たるべき未来に私は不必要。何においても不足した私に何が出来ると、あの家でひとり考える時間は孤独だった。
たった独り、思い出に責め立てられる無為な日々を過ごし続けるくらいなら。
それならば、虚しさの募る望郷の念に浸って、ありもしない故郷の面影を探しに海に出たってバチは当たらないだろう、と。
だから海に出た。ひとりで旅に出た。
ひとりぼっちなら、最初からそれを自分で望めば良いんだと思ったから。
_______呆然とした顔も、床にぶつかった音も、掠めた指も、阻むような静電気の感触も、何もかも覚えている。
初めて目の前で�犹爿瓩鮓�た。
毎日気丈に笑っていたあの子はもういない。
そのあまりにも呆気ない現実に、死への実感は薄かった。
ふとあの村に帰れば、なんてことない顔で道場にいるんじゃないかとすら思っていた。……でも、違うんだ。死んだんだ。
たしぎさんのように大人になることもなく。
私のように新たなことを学ぶこともなく。
ゾロくんのように強くなることもなく。
あっけなく、静かに、一瞬で。
「あ"ぁぁあ……っ！！！」
宴の喧騒が少しだけ聞こえる離れた場所で、一人うずくまって泣いた。
どうか雪にこの声が埋もれますようにと願いながら、誰にも聞こえることがないようにと思いながら。
「_______勝手に離れんなって言ったとこだろうが」
腕を後方へ強く引っ張られ、雪に押し付けていた額が離れた。涙が溢れたままの目を向ければ、お酒の匂いを纏ったゾロくんが少し赤い頬で立っていた。
「な、んで」
「……さァな」
私と同じように座り込んで、懐へ隠すように抱き締められる。その体温と匂いに、涙はもう止まらなかった。
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