59話 ページ15
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「大丈夫?頭痛い?」
「っ、おい!」
本当にぶつけたのか、少し額が赤い。
昔、くいなちゃんが思いっきり竹刀で額を打ったときと似た色をしていた。指で軽く撫でるとピシッと固まるゾロくん。痛かったかな。とはいえ微動だにしないので、なんだかおかしくてクスクスと笑う。
あのときは後で青アザになってしまって、痛そうだったなあ。くいなちゃんは笑ってたけど。
「ふふ。また青くならないように、よく冷やしなね」
「_________」
何だかとても懐かしくて、笑みが溢れた。
どうせ眉は下がっているから、笑顔には見え辛いだろうけれど。
旅の最中でも時折思い出していたけれど、こうして日々を共有した相手がいると、より鮮明に思い出せる。
くいなちゃんに手酷くやられる度、ムスッとしたゾロくんに苦笑を見せながらガーゼを貼りに行ったものだ。ゾロくんだけではなかったけれど。
もう一度だけ指で患部を撫でて、立ち上がる。
まあ、あの時よりずいぶんと頑丈になっただろうから、青あざになることも滅多にないだろう。優秀な船医さんもいるし。
_______ピシッと固まったまま動かないゾロくんは先ほどの私とそっくりだと気づかないまま、私は上機嫌にその場を立ち去った。
「……っ…………っ!」
「そういやァ、ゾロのがニ個年下だったか……イッテェ!!スネはやめろ!スネは!!」
「私、お友達をお部屋にご招待するの初めてで、なんだか緊張してしまいます……!」
「フフフ!楽しみだね」
「はい!」
忙しなく周囲を海遊するしらほしさん。失礼かもしれないけれど、余波が凄い。乱れた髪を直しつつ、ニコニコ嬉しそうなしらほしさんを見て嬉しそうな護衛さん達に、本当に愛されているお姫様だと実感する。
そうだ、ナミさんやロビンも呼ぼうか。
しらほしさんに問いかけようとしたときだ。
「_______……」
「こういった場合は、どのようなおもてなしを……A様?」
ピリ、と肌を舐める不快感。
しらほしさんや護衛の方々が首を傾げているが、覚えのある感覚に思考を張り巡らせる。
海賊も使うような酒場で情報を集めていたときの、好奇の目を向けられているあの感覚が近い。と言っても私は本命ではなさそうなので、狙いは恐らくしらほしさん。
そこまで考えた瞬間、ブワッと視界を覆う
咄嗟にバックステップを踏んでかわすと、地面に飛び散った泥は形を成し、男になった。
「ケヒヒヒ……大人しく捕まってちょ〜だいよォ〜!」
あ、やばい。
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