開久の忠犬 番外編

人生における人 (片桐) ページ28

(リク)


「知ってるかァ？ A」

「？何をですか」

「智司の野郎、案外 所有欲 強えんだぜ」

「はぁ？ってあだだだだ！！！」


唐突に呼ばれて、椅子の近くまで行ってみると むにぃ、と昨日叩かれて赤くなった頰を引っ張られる

いつもならそう痛くもないものの、腫れている為三倍くらい痛い。ビリビリする頰を守るように優しくさすり、いきなり何なんだと相良さんを睨むように見つめても笑っているだけ


昨日、軟高にて溜まった補修を片付けてたら門限を２分遅れたとか難癖つけられてやられた頰
機嫌が悪かったのか、同じ場所を二発。お陰で真っ赤に腫れていて空気に触れるだけで痛い

あの院長は気にするところがおかしい。
殴る場所は厭わないくせに、門限やら何やらに過敏だし殴っといて世間体とか言い出す
不満でいっぱいだが、誰も口に出せないのが現状で、周りだって薄々気付いていても黙っているのが現実だ


むすっとして内心 愚痴をばら撒いていると、椅子に座ったままの相良さんが私のスカーフを掴んで思い切り引っ張った。咄嗟に肘置きに手をやり勢いを殺したものの、必然的に腰を折る体制になり顔が近くなる。首の圧迫感に顔を顰めていると相良さんが口を開いた


「分かるか？ありゃ ただの独占欲のが断然良いぜ
所有欲ってのはな、タチが悪りぃんだよ」

「……はぁ」


溜息に似た返事をする。イマイチ意味がキチンと伝わらない。スルリとスカーフから手を離した相良さん
引っ張られるのも嫌なのでしゃがんで目線を相良さんより下にすると、上機嫌に頬杖をついて続きを話し始める


「所有欲ってのは好きにしたら良いが、大前提としてソイツは俺のだって言ってんだ
物を貸したらそれは自分のだから返して欲しいって言うだろ？」

「……ま、そーですね」

「これでわかんねーお前じゃねぇだろ？忠犬さんよォ

そろそろ智司はお怒りだぜェ？」



理解したような、してないような。
言いたいことはわかるが、何故このタイミングなのかが分からない。今は片桐さんも居らず、取り巻きもいつもの半分程度
片桐さんが戻り次第 帰路に着くので片桐さん待ちだ

……まぁ、確かに。腫れた頰とか見るたび誰かを殺しそうな目ェしてるもんなぁ、片桐さん。

２→←出血多量は誰のせい (開久)

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す