39話 ページ39
，
全てを捨てて来た。
欲しくもねェ地位を得て、なけなしの自由を振りかざして、意図せず同盟相手を見つけた。
そうして、憎むべき仇敵の喉元を裂いたのだ。
コラさん、コラさん、生きているよ。
おれは、生きている。
まだまだ危険はある。ドフラミンゴを堕とした今、連鎖的にカイドウが出てくる。その他にもドフラミンゴとの取引相手や海賊がおれ達を狙うだろう。
それでも、不思議と後悔はなかった。
「ガレキが空へ飛んで行く！」
「国中のガレキが……！『東の港』の上空に集まっていく！」
瓦礫が空を埋め尽くす光景に、死んでたまるかと足を開く。せっかく守り抜いたこの命を、こんなあっけなく散らすわけにはいかない。
大騒ぎの連中に乗じて、港へ走る。
走って、走って、走って。
遠い昔に、さして大きくもない島をまるで千里の道のように走ったことを思い出す。いつになっても辿り着かない港と、短い足が疎ましかった。その先にいるであろう人間の影すら見えない己の小さな背が、煩わしかった。
もっと足が長ければ、もっと視線が高ければ！！
何度も己が幼いことを呪った。
精一杯背伸びして先を見通そうとする内に、いくつもの時が流れている。十年近く前のことだ。それでもこの十年、忘れたことはない。
麦わら屋が藤虎相手におかしな戦いをしているのを背に、連結橋を走った。
_______視界の端に、影。
「うおっ！？どうした、トラファルガー！？止まるな！！」
「っ、あれは」
「何だ！？……船？」
_______あれは、あれは！！！
「っおい！？」
弾けるように、来た道をそのまま逆走。人とぶつかりそうになる度に能力を使って入れ替わり、早急に港へと戻る。
あの船は存外早い。それでも、昔とは違うのだ。
短い足は長くなったから並走出来るし、低かった視点は高くなったから船を見失うことはない。
港に着いた船から上陸する人影。霧が視界を邪魔して、いまいち顔が見えない。だが、自分より小さなその影に、歯を食いしばった。
空を見て立ち尽くすその背中に、叫んだ。
一度も口に出したことのない、唯一の名前を。
「_______A！！！」
背中が、振り向く。
丸い目と視線が交わった刹那、自然と口が動いた。
，
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 427人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「ONEPIECE」関連の作品
面食いミーハー女子はワンピースの世界にトリップした。【ONE PIECE】
旅人だと言い張る五皇の海賊〜第5章〜【ONEPIECE】
廻った世界で月を探す【ONEPIECE】【呪術廻戦】
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雅榴(プロフ) - 翠さん» 多分、どうせ年内には作るんだよなぁと開き直ったので尻叩きに予告してしまいました笑 休息も兼ねますので多少時間はかかりますが、気長にお待ち頂けると嬉しいです。コメントありがとうございました！ (2023年2月5日 18時) (
レス) id: 7a47bd801a (このIDを非表示/違反報告)
雅榴(プロフ) - 時雨さん» 休息も兼ねてゆっくり考えようかなと思っているので、気長にお待ち頂けると嬉しいです〜！ご期待に添えるよう頑張ります、コメントありがとうございました！ (2023年2月5日 18時) (レス) @page42 id: 7a47bd801a (このIDを非表示/違反報告)
翠(プロフ) - なんと…！続編も…！！最高です、本当にありがとうございます。体調にはお気をつけて。また！ (2023年2月5日 16時) (レス) id: 64131c5e87 (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - 続編ありがとうございます🙏最高です；；！この後どんな展開になるのかとても楽しみです！これからも応援しています。 (2023年2月5日 13時) (レス) @page42 id: dee2fbc24a (このIDを非表示/違反報告)
雅榴(プロフ) - チックタックさん» ありがたいお言葉をありがとうございます！続編はうっすら考えてはいるものの、そもそも作るかを悩んでいるのでそう言って頂けると嬉しいです。コメントありがとうございました！ (2023年1月31日 12時) (レス) id: 7a47bd801a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
