【ONE PIECE】必要ない人間のはずだった【ゾロ】 (ページ24)

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24話ページ24

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衝動だった。
拒絶という筋を通すことも忘れてしまうほどの。

葬式の日ですら涙を見せなかったAが、たしぎとか言うややこしい海兵を見て泣きそうな顔をしていたから。

この広過ぎる海で久しぶりに出会えて、かつタイミングが悪過ぎたから。

全てがおれらしくない衝動的な行動で、欲望でもあった。
おれはもう海賊なのだから懸念材料を残すなら連れ去っちまえば良いと思ってしまって。

分かっていたのか否か、ここまでの道中こいつと話すタイミングは多々あったが昔のような気さくさはない。同郷の友ではなく、麦わらの一味の海賊として扱われているとすぐに理解した。

折り合いをつけなければ。
筋と仁義を通すのが男だ。

おれがその筋を曲げてしまったのだから、責任を取るのもおれだ。……それが、例え永遠の別れを意味するのだとしても。本気の拒絶を真っ向から受けることになるのだとしても。

アラバスタを生き残った今のこいつなら、並大抵では死なないだろう。戦闘センスの無さは健在だが運動は(多分)マシになったし、海賊と違って真っ当なルートを通れるならおれ達よりも圧倒的に平和に海を渡っていける。

ベッドに横たわるAの手首に見覚えのあるブレスレット。ずいぶんボロボロになっていて、連なる石の一つは少し欠けている。今見ると安っぽいし子どもっぽいな。

くいながまだ生きていた遠いあの頃。
名を呼べば、庭で修行していれば、隣にいれば、柔らかい笑みと共におれの名を呼んだ。
時々Aにちょっかいかける門下生をおれかくいなが懲らしめたり、オロオロするAにしょうがねェなと笑っていた日々。

守ると定めているのもおれの勝手なエゴで、こいつは何も知らないんだ。
くいなの未練も、思いも、誓いも。

……おれが、どんな気持ちでずっと生きてきたのかすら。

「…………」

ほんの少し口を開けて、すぐに閉じた。

それを口にすれば、全てがブレてしまうから。

…… 一瞬でも口にしようか迷うのは、鍛錬が足りてねェ証拠だな。代わりに一つため息を吐いて、ビビの帰りと飯と酒の到着を待った。