【ONE PIECE】必要ない人間のはずだった【ゾロ】 (ページ15)

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15話ページ15

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私がくいなちゃんは死ぬことを思い出したのは、偶然だった。

ゾロくんとくいなちゃんの約束。
それは、遠い昔の友人が"ゾロの原点"と語った過去。三刀流に至った理由。ゾロの心に深く刻まれた記憶。

いっそ、思い出したくなかった。
くいなちゃんが何故死ぬのか思い出せなくて、それでも死んでしまうことだけは知っていて。階段から落ちるくいなちゃんの姿を見た時、「嗚呼、これだ」と悟ってしまった。

階段の上にいた私が手を伸ばしても、ダメだった。
ただ目を見開くくいなちゃんが脳裏に焼き付いている。

ゾロの原点たる過去を変えていいのか悩み、くいなちゃんに生きて欲しいと悩み、自分が死ぬのではと悩んだ。過去を変えてしまうことが情けないほど怖くて恐ろしくて。
それでも、強くなりたいと足掻くくいなちゃんを知っていたから、ようやく決心して_____

咄嗟に出た手は、静電気のような何かに弾かれた。

「_______くいなちゃんっ！！！」

「_______」

バチン！！と音がして、触れ合いかけた手を反射的に引っ込めてしまう。その失態に気づいた時には、くいなちゃんは階段の下だった。

_______抗えなかった。阻まれた。

カタカタと震える身体と揺れる視界。じわりと滲んでぼやけ、倒れて動かないくいなちゃんが見えなくなっていく。
駆けつけた叔父さんの声も遠く、世界の全てを五感が拒否して、自分を抱きしめるようにうずくまった。

私は、何かを変えられると信じていた。
きっと物語を何か良い方向に出来るはずだと、生まれ変わったことに理由があるはずなのだと。
私は、人に影響を与えられる人間だと思いたかった。

違った。
くいなちゃんはとうとう悩みを打ち明けてくれず、ゾロもいつしか自立してルフィ達と出会うだろう。決められた道なりのままに進むのだろう。

そこに、私(異物)は必要なのだろうか。

友人が言っていた。"ゾロは自立している"と。
だからこそ強くあれる男なのだと。

そんな人に、私は必要なのだろうか。
この世界に、私は必要なのだろうか。

「必要、ない」

運動も剣も何も出来ず、くいなちゃんも守れなかった私など、少なくともゾロには必要ない。

くいなちゃんのお葬式以来、彼が私の元を訪ねることはなかった。

それが、答えだろう。

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