【ONE PIECE】必要ない人間のはずだった【ゾロ】 (ページ14)

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14話ページ14

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Aは道場に来なくなった。

あいつが道場の奴らに剣士の逸話を語って聞かせる声も、救急箱を持って走る姿も、門下生に字を教える背中も、全て失われた。

くいなの死と重なってしばらくは道場も暗鬱とした雰囲気だったが、先生が朗らかで居続けたからいつしかそれも消えた。

先生はよく様子を見に行くらしいが、それでも声を聞ければ良い方らしい。聞こえる声も、いつも芯を失った力無いものだとも聞いた。

「ゾロも、あの子に会いに行ってあげてくれないか」

先生は最後に必ずそう言う。おれとくいなが喧嘩して、仲裁したり宥めるのはいつもAで、必然的に三人で一緒にいることも少なくなかったから。
おれだって顔を見たくないわけではないし、今どうなっているのか確認したい。

自分は必要ないと断じたAの真意は分からない。
あいつがくいなを守れなかったことを悔いていることは分かるし、おれと居ればくいなを思い出すことも理解出来る。

けれどおれは、Aを守らなければならない。

くいなが強くなりたかった理由の一つに、Aがいる。
くいなは夢を叶えて、信じ続けてくれたAを守ってやりたかったんだ。あいつは道場で一番鈍臭いから。

死んでしまった今それを知るのも、あいつを守れるのもおれしかいない。

大剣豪になっても、それまでにAが死んでしまったらおれがくいなに怒られるだろう。強くなったクセに、女の一人も守れないのかって。
くいなとの約束を果たす為にも、くいなの意志を継ぐためにも。

それでも会いに行けない。

おれは、明確に拒絶されてしまったから。

「ゾロ、君が決めたことなら尊重しよう。いつかでいい。
いつかきっと、あの子に会いに行ってあげてほしい」

「……」

「君がそんなにも臆病になるのだから、無理強いは良くないしね」

「あ？」

臆病？違う。あいつがそれを望んだ。
カチンと来て思わず睨んだが、先生はどこか寂しそうに笑う。

「いつか、きっと。
あの子は賢いが故に、立ち止まってしまう子だから」

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