【ONE PIECE】必要ない人間のはずだった【ゾロ】 (ページ13)

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13話ページ13

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どのくらいそうしていたかは分からないが、道場から出てきた大人がおれとAに驚き、その度に痛ましそうな顔をして、一声かけてから帰っていく。

誰がどう見たってAは深く傷付いている。
でもおれのように激昂したりするんでもなく、ただうずくまって一人耐える子どもを見るのが大人にとって痛ましい光景であったんだと思う。

声をかけられても、頭を撫でられても、Aは何も返さなかった。
夕闇が道場を染めていく。茜色が紺色に変わって行くその頃にようやくAが口を開いた。

「……帰らなくていいの」

「良い」

変な奴だと思った。
傷付いて、顔を伏せているのはAなのにおれの心配をする変な奴。

「……言ってくれなかった」

ポツリと落とされた言葉はあまりにも小さくて、周囲が静かでなかったら聞き逃していたくらいの声だった。

「くいなちゃんが悩んでたの、言ってくれなかった」

「……聞いてたのか」

昨日の約束。その時打ち明けられたくいなの思い。
Aはもしかしたら気付いていたのかもしれないし、その上でくいなに筋肉量とか教えたのかもしれない。

それでも、くいなはAに打ち明けなかった。

おれは何となく、くいなの気持ちが分かる。
くいなは強くなれると信じてくれるAに弱音を聞かせたくなかった。笑顔で肯定してくれるAを守りたかった。

Aの中でのくいなは、強いままで居たかった。
だから、弱音なんて吐けなかったんだ。

「守れなかった、抗えなかった(、、、、、、)。

私は……_______」

不意に、Aが顔を上げる。
涙の跡が無いか確認しようと顔を覗き込んで、思わず息を呑んだ。

ようやく見えたその目は、どこか遠くを見ていたから。

「_______必要、ない」

力なく、ほとんど呼吸にも等しい声。
それでもおれは確かに聞いた。

「おい」

「私、帰るね。
ゾロくんも早く帰りなよ、もう暗いんだから」

「おい！！」

おれの声が聞こえていない亡霊みたいにフラリと立ち上がって、遠い目をしたままおれに微笑んだ。

「ばいばい(、、、、)、ゾロくん」

歩いていくAの背を追いかけられず、突っ立ったまま見送ってしまう。

追いかけなければならないのに。
今のあいつを一人にしてはいけないと分かるのに。

「_______必要、ない」

脳裏に染み付くその言葉に胸が酷く痛んで追いかけることなんか出来なかったんだ。