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10話 ページ10



あそこの店の息子、あっちの店主、向かい側の家の青年。
指差して教えられる奴は前にAに声をかけてきた人間ばかりだ。そう言えば、先生は一際嬉しそうに笑った。


「君のように、将来を揺るがず決められている人というのは少ない。道場だからやはり剣ばかりになるしね。
あの子はね、そういう人に剣以外の道を示すんだ」


剣以外の道。
その答えは、寝耳に水だった。


自分の知ることを教え、見える世界を伝え、そうして狭かった視野に知識を与えることで未来への選択肢を広げる。
選べるはずのなかった未来を掴むキッカケを与えられる人間。

確かに、剣しか見ていないおれには分かるはずもない事だった。
既に見るべき未来を見据えて定めたおれに、別の選択肢など必要ないのだから。

「人に正しい影響を与えられる人も、人に新たな選択肢を与えられる人もそう居ない。
ゾロ、君は未来を既に決めている。そのために努力も出来る。だからこそ、あの子の良さを知っていてほしい」

他の選択肢の入る余地がないほど決意し、それを成し遂げるために誰より努力出来るからこそ。
そう話して道場に戻る先生。

なんとなく一人で道場に戻りたくなって、先生とは別の道を使って道場へ足を進める。


おれやくいなの他の門下生に文字を教えたり、まだ満足に読めない奴に本で知った剣士の話をしたり。おつかいに行くのはもっぱらAだ。
先生も教える側ではあるが、たくさんいる門下生の面倒を見ているから教える時間自体少ない。それを補っているのがAなんだろう。

アイツがどんなつもりであろうと、そうして自然と新しい選択肢を与えられる人間になったんだろう。

何か、喉に骨が引っかかる感覚がする。


「あれ?ゾロくん?珍しいね、こっちに来るの」

「あ?」

目を大きく瞬きして、珍しそうにおれを見る。
そうして、何かを察したらしいAが苦笑した。

「念のため聞くね、こっちに何か用事?」

「いや、おれは道場に帰ってる途中だぞ」

「……道場、真反対だよ」


「げっ!!」と声を出したおれを見て、Aは案の定と言いたげに頭を抱えた。

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たかこ(プロフ) - 続編楽しみにしてます!! (2022年7月5日 22時) (レス) @page45 id: 2079c866b2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雅榴 | 作者ホームページ:http://なし  
作成日時:2022年3月11日 4時

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