【ONE PIECE】必要ない人間のはずだった【ゾロ】 (ページ34)

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34話ページ34

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おれが事態を理解する前に変な格好の男のそばにいた黒服が戸惑うAの腕を掴み、そのまま緩めの拘束。
周囲にいる大量の野次馬は一定の距離を保ったままあいつに憐れんだ視線を送る。

その時点で、額に青筋が浮いたのは自覚した。

「先に港へ連れて行くえ」

「はっ」

「待って、私は……！」

Aは怯え切って真っ青な顔で抵抗するが、黒服の拘束を解くことはできず。むしろ力が増したのか掴まれた腕を痛がって顔を顰めた。胸の内がドス黒く荒れていく。

周囲から微かに聞こえた声。
『天竜人』『可哀想に』『気に入られてしまった』

_______『妻となり、マリージョアへ』

ハチに騒ぎを起こすなと言われている手前、一瞬刀に手をかけるのを迷った。刀を使わず、無刀流であいつを助けることも出来なくはない。見たところあの黒服はおれには勝てねェだろう。

だが、そんな考えは吹き飛んだ。

Aがこちらに気付き、恐怖で引き攣った顔に安堵が浮かぶ。右耳には、おれが渡したピアスが揺れている。

涙交じりの声で、おれに向かって手を伸ばした。

「_____助けて……！ゾロくん……ッ！！」

「____________」

気付いた時には酒瓶は後ろへ投げ捨てて、落ちて割れる前にその手を掴んでいた。

そのまま引き寄せる形で腕の中に収めて、微かに残った理性でAの腕を掴んでいた黒服の腕を捻って軽く突き飛ばす程度にしておいた。

どっちにしろ、後で怒られそうだ。

チラリと下を見れば安堵と歓喜の表情を浮かべて体の力を抜いている。だが、すぐに切り替わった。

「_______ちょっとだけ、動かないでね」

「あ？」

パァン、パァン……ッ！！

高らかな二発の銃声がおれとAの胴体の間から響く。
おれ含めた周囲の困惑に包まれる中、間から溢れた大量の赤い液体が周囲に飛び散る。

そのままバランスを崩したおれは背中から倒れ、Aも全身の力を抜いているらしく側から見れば死体(、、)だろう。

……よく分かんねェが、合わせとくか。

すかさずガキの姿をした奴がうえ〜〜んとわざとらしい泣きの演技を周囲に見せつけていた。あまりにも滑らかな連携プレーだからAの知り合いかと思ったが、知らねェ奴らしい。

こんなことをする理由もよく分からなかったが、唐突に入ってきた奴も分からなかった。
……まあ、Aは助けられたしどうでもいいか。

「ごめんね、ゾロくん」

いつもの『の』の字を見せられたので、黙って頭撫でといた。