六話 ページ6
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ウタがこのエレジアでライブがしたい、と言い出した。
「確かに瓦礫撤去しなくてもウタワールドだから関係ないけど……」
「元は音楽の国だったから最適だし、名案でしょ！」
自信満々なウタに思わず眉を下げる。
どうやらウタはこの前聞かせてくれた『新時代』という曲以外にも作るつもりらしく、手が回らないライブ準備の手伝いをしてほしいらしい。
「チケットとか、グッズとか、来てくれるみんなに用意したいんだけど作り方も全然分からないんだ」
「……解決の糸口はある、けど……」
「本当！？」
どうしようもなく不安になるのは、考えすぎだろうか。
何故ウタがこのタイミングでライブをしたいと言い出したのかが分からない。もちろんこんなご時世だし、ウタを心待ちにするファンからすればこの上なく嬉しい知らせだろう。
けれど、ウタ自身の動機が分からないのに加えて『新時代』で感じたとっかかりがある。頷くか考えあぐねていると、シュンとウタのウサ耳が垂れた。
「やっぱり、私のライブだし私がやった方がいいよね……」
「ああいやそうじゃなくて！えっと……ゴードンさんに頼んだりは」
「ダメ！！」
劈くような声に、思わず黙り込む。ウタはすぐにハッとなって謝ってくれたが、途端に早口で喋り出す。
「ご、ゴードンには内緒！サプライズしたくて！それにゴードンってば私とセンスが違うから、ライブグッズのデザインとか出来ないと思うし！」
「……そっか」
「とにかく！Aに手伝ってほしいの！みんなが待ってくれてる、私もそれに応えたい！みんなが幸せになれる『新時代』を作るために！」
「……ねえ、ウタ」
「？なに？」
「どうしたの？」
たった一つの問いかけに、ウタは黙り込んだ。
ゴードンさんに隠したがるのもそうだけど、ここしばらく様子が変だ。以前は星のようにキラキラした目でしていた配信やファンとの交流も、どこか陰が差したように見える。一人で部屋に篭る時間も日増しに増えている。
最近しきりに口にする『新時代』は、いまいち要領を得ない。「みんなが待ってる」、「それを望む人がいる」ばっかりだ。
「…………わたし、は」
「うん」
唇を戦慄かせるウタ。また俯いたせいで顔があまり見えない。根気よく待っていると、私の手を握るウタの手に力がこもった。
「わたしは_______私は�牾ぢ鰻�いのウタ�瓩世�ら。
海賊に虐げられるみんなを、救いたいんだ」
その言葉が本心だとしても、きっと本音ではなかった。
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雅榴(プロフ) - 樹乃さん» かなり前の作品なのに、見つけてくださってありがとうございます。何も気にせず、ひたすら書きたいものだけ書いた作品なのでとても拙いものですが、そう言って頂けて嬉しいです。コメントありがとうございました！ (10月28日 21時) (
レス) id: 7a47bd801a (このIDを非表示/違反報告)
樹乃(プロフ) - あぁあ…！切ないですね、とても良いお話だと思います。最期、ウタちゃんと夢主が少しでも会話できたら良かったんですけどね… (10月28日 18時) (レス) @page16 id: df66a330f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雅榴
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Miraku/
作成日時：2023年5月2日 14時
