134話 ページ23
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瞼を持ち上げて、ぼんやりと目に入るだけの天井を眺める。何かを思うほど頭は回らず、かといって長い眠りから目が覚めたばかりでは眠ることも飽いた。
「あ、起きたでやんすか！誰か呼んでくるでやんす！」
視界に割って入ってきたと思えばドタバタ出ていくおたまちゃん。その様子も眺めるばかりで、空回りする頭を抑えながら何とか体を起こす。
「……鏡」
酷い怠さと疲労感、熱に浮かされる感覚。どれも何故か懐かしくて、懐にしまい込んでいた手鏡を思い出す。
相変わらず曇ることなく輝く鏡面。ぼんやり眺めているだけで景色は変わり、いつしかその光景は自室だけでなくリビングなども映すようになっていた。
忘れかけていた以前の家族や友人達の声も顔も、些細な仕草すらも思い出せる。
それと同時に、足元がふわふわと軽くなる感覚が増していくのだ。触れるものに触れているという認知や、私を呼ぶ声への認識、目の前で話す相手すら薄い膜を隔てた先にいるような。
そうだ。当事者意識が、薄れているんだ。
まるでテレビ画面や本を見ているときのように。
「この世に、ない……場所へ」
遠い昔。遠い遠い昔に、高熱を出して看病してくれた誰かの面影。恐らく両親なのだろうと思うけれど、あまり覚えていない。
熱を出したときに側にいてくれた両親がいる世界。
同じ時を過ごして笑った友人達がいる世界。
いずれ誰からも必要とされなくなるこの世界よりも、よほど。
「っう"、ハ……ッ！！」
荒縄で固く締め上げられるように痛む心臓に、胸元と布団を掴んで呻いた。原因不明でも何でもいい。脳裏に幾度も過ぎる影など、いつかは離れていくものなのだから痛みで無理やり掻き消してくれる方がちょうどいい。
無様に縋る姿なんか、見せたくない。
「……帰り、たい」
ポツリと漏れ出た言葉がきっかけであったかのように、鏡が淡く光り始めた。
驚くことも億劫でそのまま見つめていると、鏡面がまるで本物の水面のように滑らかな波紋を生む。明らかに異常なのだが、私はそれをまるで当然のことのように受け入れ、一拍遅れて確信した。
_______帰れる。
空白の頭で指を動かす。触れた指先に反応してまた新しい波紋が生まれ、鏡とは思えない柔らかな感触。そのままゆっくり押し進めれば指が鏡へと沈んでいく。
やけにブレスレットを付けている左手が絞め付けられて痛いが、きっと気のせいだ。
……そういえば、このブレスレットは誰から貰ったんだっけ。
沈みゆくまま身を任せようと体の力を抜いて_______手鏡が、吹き飛んだ。
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雅榴(プロフ) - あやさん» 今作で更に好きになれたなら嬉しいです〜！👏 たくさん楽しんで頂けたなら幸いです。こちらこそ読んで頂きありがとうございました！コメントもありがとうございました！ (2022年12月13日 16時) (
レス) id: 7a47bd801a (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - この作品を読ませてもらって本当にドキドキとときめきが止まらなかったです！元々ゾロは好きだったのですがこの作品でもっと好きになりました。素敵な作品をありがとうございました✨これからも頑張ってください応援してます！ (2022年12月13日 9時) (レス) @page49 id: 0f7e0fb150 (このIDを非表示/違反報告)
雅榴(プロフ) - 翠さん» たくさんのお言葉ありがとうございます！とても楽しんで頂けたようでとても嬉しいです！長いし文も多いのに最後まで読んで下さってありがとうございました。時折頂けたコメントも嬉しかったしモチベになりました。コメントありがとうございました！(*´∀｀*) (2022年12月3日 20時) (レス) id: 7a47bd801a (このIDを非表示/違反報告)
雅榴(プロフ) - なな姫さん» ありがとうございます〜！楽しんで頂けたなら何よりです！次回もまたONE PIECEかなと思っているので、その時もまたお付き合い頂けると嬉しいです。コメントありがとうございました〜！ (2022年12月3日 20時) (レス) id: 7a47bd801a (このIDを非表示/違反報告)
翠(プロフ) - 長文、何度ものコメント、失礼いたしました。お体にお気をつけて、過ごしていって下さい。今までも、これからも、応援しています！╰(*´︶`*)╯♡ (2022年12月3日 19時) (レス) @page49 id: eb4de4b192 (このIDを非表示/違反報告)
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