捌話 ページ8
，
彼女には、生まれ故郷がない。
正確に言うならば海賊の手によって滅ぼされたのだ。
両親と共に歩いた帰り道も、友達と遊んだ公園も、取っ組み合いの大喧嘩をして叱られた学校も、全て島ごと沈められた。
まともな教養を学ぶ前に全て消えたことを彼女は特段気にしていない。この世界、この時代にはよくあることなのだと割り切っている。海賊に恨みを抱いたこともない。
けれどそれはそれとして、やはり目の前で蹂躙され搾取される人間が見ていられなかったのも事実だ。
自分達が正しいのだと言わんばかりに幅を利かせる悪徳な人間が許せなくて、あの日安全な海軍の船へ導いてくれた名も無き海兵に報いたくて、適正年齢になり次第すぐに志願した。
海賊はもちろん、それが海兵であろうと叩きのめしてしまう破天荒ぶりに海軍の上層部は随分頭を痛めたものだが彼女はそんなこと知ったこっちゃない。
戦うことが好きで、搾取される人を救いたくて、確かな信念と共にあったからこそ海賊であろうと見逃すこともあったし上司に当たる人間に拳を振るったこともあった。
けれどそれは、彼女と海軍の"正義"が重なっていたから海兵となったのだ。自身の信念が貫けるなら革命軍でも海賊でも構わなかったのだ。
だから、海兵でなくなった今でも彼女の
初めて編笠村のお玉からエースのことや国のことを聞いた時、彼女は決めたのだ。
この国のおこぼれ町に住む彼らを守ると。搾取されるばかりで抵抗も許されず、心の芯を叩き折られて尚、
もし、この国の侍達の伝説が本物であり国がいつか救われるのなら、それまでエースがお玉に残した小さな灯火を消してはならないと。守らなければならない反逆の狼煙なのだと信じた。
だから、だからこそ許せなかったのだ。
外から来た自分を笑顔で受け入れ、えびす町の心を支え、国を何より愛するヤスこと康イエが羅刹町で磔にされる現状が。
「子供らの目を塞げ！！
『光月』に仕えた最後の大名が、いやさえびす町のお調子者があの世へ参るぞ！！！歌ってゆこうか！！！
あらよっと♬」
「康イエ〜〜〜！！！」
将軍の怒号、
最中に聞こえる、ヤスの娘のおトコの
ビキリと手の筋が浮いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 315人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リエ - いえいえ、お忙しい中ありがとうございます！ご無理せず体調には気をつけてくださいね！ (2022年1月25日 18時) (
レス) id: 62560190e1 (このIDを非表示/違反報告)
雅榴(プロフ) - リエさん» コメントありがとうございました！ (2022年1月24日 20時) (レス) id: 7a47bd801a (このIDを非表示/違反報告)
雅榴(プロフ) - リエさん» コメントありがとうございます。少々私生活が忙しくなってしまったのと、戦いが始まってどう参戦するかで悩んでしまい更新できずにいました。もうしわけないです……_:(´ཀ`」 ∠): もうそろそろ落ち着いてきて更新しようと思っているので、もう少々お待ちください！ (2022年1月24日 20時) (レス) id: 7a47bd801a (このIDを非表示/違反報告)
リエ - 更新楽しみに待ってます！ (2022年1月21日 23時) (レス) id: 62560190e1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雅榴
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Miraku/
作成日時：2021年12月19日 20時
