１６話 ページ16
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彼女は一人、はした金を持って街に赴いていた。
世界政府という巨大な存在が現れるということを、人混みの中を走ることで知っていたが、そんなことはどうでもいい。
エースも待つダダンのところへ追加の薬と包帯を持っていくことしか考えていなかった。あと少し、今の包帯を変えれば皆のところに帰れると。
その間、エースやダダンはおろか、Aもいなくなったと慌てる彼らのことなど露知らず。
街の人間達の喧騒が、天竜人を崇める声から慌てる声に変わる。大事な式典の日に、天竜人が機嫌を損ねたら、という声。
この街は階級を命とする場所で、そんな人間達がこの世の頂点とも言える天竜人の機嫌を損ねるようなことをするだろうか。
幼いながらに感じた違和。彼女は薬と包帯片手にそっと海辺の港に近寄った。
真隣が海の歩道を進み、少し先の人集りを目指す。
あと少しというところで、自分の歩く道にコツンと漂流された何かがぶつかるのが見えた。
「……！」
何となしに見ると、それはーーーよく見慣れた、サボの帽子。ところどころ破れ、水を吸って今にも沈んでしまいそうなソレを慌てて回収し、水を切る
どうして、こんなところに。
彼女は咄嗟に天竜人の船を見る。
天竜人の船の奥で、何かが燃えていた。
「ーーーっ！！！」
叫びそうになった。自分に優しくしてくれた彼の名前を。ある日突然いなくなった、彼らの兄弟を。
人と話すことが苦手で、基本的に強気な彼らに言葉を出すことを躊躇う私をいつまでも待ってくれた人
終いには表情で察してくれるまでになった。
感謝していた。彼らと打ち解けるキッカケをくれた人を
「すまない、その帽子を渡してくれないだろうか」
走り出そうとした彼女の肩に手を置いて、引き止める誰か。肩に置かれた手からして大の大人。
恐怖に駆られた彼女の体は石のように固まり、手の中にある帽子を強く握る。勇気を出して、ゆっくりと振り返る。
マントを着て、フードを深くかぶって顔は暗い。
彼女は幼く、身長も低いため鋭い眼光が見えた。
「っ！！」
「……怯えさせたか、すまない。
その帽子の持ち主を知っているんだ。居場所も知っている。渡してやりたいんだ」
「……？」
これは、サボの帽子だ。
この人は何か間違えているのかと思うが、そんなことはないと感じるほどに真っ直ぐな視線。
ちらりと帽子を見て、彼女は恐る恐る手渡した
「……ありがとう」
きっと優しい人だと、彼女は感じた。
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雅榴(プロフ) - 草団子さん» 嬉しいお言葉をありがとうございます！我ながら懐かしいなと思いつつ、未だコメントを頂ける喜びを噛み締めております。コメントありがとうございました！楽しんで頂けたなら幸いです。 (2022年2月7日 2時) (
レス) id: 7a47bd801a (このIDを非表示/違反報告)
草団子 - 神作品とは、まさにこの作品の為にあると思いました。 (2022年2月6日 15時) (レス) @page39 id: c9f8dc2643 (このIDを非表示/違反報告)
雅榴(プロフ) - おいしいくじらさん» 楽しんで頂けたようで何よりです(笑)かなり前に終わったにも関わらず閲覧していただきありがとうございました。別作品も楽しんで頂けると嬉しいです。コメントありがとうございました！！ (2020年9月5日 1時) (レス) id: 7a47bd801a (このIDを非表示/違反報告)
おいしいくじら(プロフ) - あぁぁあぁあっ！！！好きです！！！！小さい頃のエースとの甘酸っぱいやり取りも、成長した2人の愛情もすごく好きですっっ！！ (2020年9月2日 7時) (レス) id: 6b76715b64 (このIDを非表示/違反報告)
雅榴(プロフ) - Mさん» 返信遅れてすみません！暖かいコメントありがとうございます、これからも好き勝手にしてはいますが、頑張りたいと思います。コメントありがとうございました！ (2020年2月13日 6時) (レス) id: 7a47bd801a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雅榴
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Miraku/
作成日時：2020年1月24日 18時
