３話 ページ3
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ふと、気流の変化を感じて上を見た
「あ、飛んでる」
培った身体能力を隠しもせず、彼は身体を大の字にして、なんならヤガラに乗る子ども達に手を振り返して、空を飛んでいる
一気に降下した後、激しい音と共に屋根と屋根の間を飛び跳ねていった。相変わらず元気なことで。
見慣れたとは言え、ああいう超常的身体能力を見ていると、常々思うのだ。
ーーーあぁ、私は
私には、所謂前世があって。そこで彼らは決して私の存在を知ることも出来ない存在だった。
どれだけ焦がれても、どれだけ想っても、どれだけ金をかけても、どれだけ願っても、彼らは私達の声も聞かず、姿も見ず、己の目の前にいる敵に立ち向かうのである
そんな彼らが今や、私という存在を認知し、声を聞き、姿を見て、笑いかけてさえくれる
羨ましいことなのだろう。私だって願った一人だ。
「……この立場でさえ、無ければ」
出来るなら、私は世でいう悪の立ち位置がよかった。ーーーー海賊に、なりたかった。
私がこれを思い出したのはサイファーポールにて訓練を受けていた時。訓練時に頭を強く打ちつけ、目の前にいた当時の訓練相手であるカクを見て思い出した
私は既に、自由を一生涯 許されることのない立場にいたにも関わらず。弱くて、自由で、バカだった頃の私を思い出したのである。
「…………ビンクスの酒を、届けに行くよ」
この唄は、好きだ。
楽しくも、何処か切なく感じるこの唄が。
自由を謳う、海賊の唄。
「海風 気まかせ 波まかせ」
私達が海に出ることは許されない。
自由どころか、人権さえも剥奪された私達が海に出たものならば同胞達が血眼で殺しに来るだろう
「潮の向こうで 夕日も騒ぐ」
あぁ、ーーーーー
「また、歌ってるのかっぽー」
「！……なんだ、いたんですか。
てっきりいつもの場所で仕事してるのかと……」
突如背後に現れた彼に、肩が跳ねた。
ジッと見下ろすその威圧感は背を丸めて縮こまりたくなる。ハトのハットリが軽快に喋っているが、本人の言いたいことはわかる
「……ごめんなさい。ルッチさんは、この唄嫌いですもんね」
だからそう睨まないでほしいなぁ
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雅榴(プロフ) - マザーティラサウルスさん» 2年も前の作品を見て頂きありがとうございます！当時とても悩みながらやっていた記憶があるので、そう言って頂けると、とても嬉しいです。コメントありがとうございました！他作品でもお会い出来たら嬉しいです。 (2022年8月12日 15時) (
レス) id: 7a47bd801a (このIDを非表示/違反報告)
マザーティラサウルス - 一気読みさせていただきました！とても面白く、そして切なくて感動してしまいました。この物語を生み出してくれてありがとうございます (2022年8月12日 12時) (レス) id: 8c175f049d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雅榴
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Miraku/
作成日時：2020年1月11日 22時
