貴方に、祝福あれ【不死川実弥】 (ページ4)

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今日も今日とて、同じ風景を描く。

様々な角度から。使う絵の具を変えてみたり。
おかげで屋敷の庭を描く時の手の動きは他の絵よりも圧倒的に滑らかに動いていた。

それでも時折、草や花、木に触れて確かめる
触れる事が、絵を描く時に質感を表す良い資料になるのだとか。
前にも触っていただろう草に触れ、木の葉に触れ、アイツは同じ絵をひたすらに描き続けた

緩んだ笑顔を見せる女だ。
絵筆を握る手が誰より優しい女だ。

この手が刀を握り、鬼の首を斬っている姿は全く想像出来ないが、一度だけ最終選別で見た事がある。
身につけていた淡い色の羽織がはためいて、溶けて消えてしまいそうな程に儚い笑顔で、弱々しい雰囲気さえ纏わせて鬼の首を軽やかに斬り落としていた

ふんわりと飛ぶと、次の瞬間には地に足を付けていて。鬼の首は一瞬の間の後にズレて落ちた。
くるりと鬼に振り向くと、黙って手を合わせて祈りを始める

危う過ぎる。

そんなことをしている間に喰われたら、襲われたらどうする。
思わずイラついて血管が浮いたが、あまりにも真摯に、献身的に鬼相手に祈るもんだから何故かこっちがたじろいだ。
それでも、声をかけずにはいられなくて。

あわよくば、俺を覚えてはいないかと思って。

「おい、お前、鬼相手に祈るなんてどういう神経してんだァ？」

「…………神は、種族などどうでも良いのです」

「あ？」

「神にとって全ては平等。
平等に生かすし、平等に殺す。
だから死した後、神が貴方にとって救い主であるようにと、せめて私が祈るの。

それは、鬼とて同じ」

鬼と人は平等である。
アイツは、そう説いた。

それは、俺にとってこれ以上ない冒涜だった。

琴線に触れたその発言に、祈りを未だ捧げていたソイツの胸ぐらを掴み上げ、強制的に手を離させる。
先程までのあわよくば、など消え失せていた

「ふざけてんじゃねェぞォ……！！！
鬼と人が同じ！？ざけんじゃねェ！あんなもんと一緒にすんなァ！！！！」

「……神にとって、と言いましたよね？
私だって、鬼は仇です。だから殺す

けれどそれは、私の事情であって、神は関係ない(・・・・・・・・・・・・・・・)」

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