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彼女の刀は、棚の奥に息を潜めていた。
彼女の手からそれを奪ったのは他でもない不死川であり、承認したのもAだ。
双方が同意の上で刀はしまい込まれ、同意の上で今、彼女の手に戻ったのである。

久方ぶりの、刀。
彼女はしばらくずっと絵筆を握っていた為、懐かしい感触に少し目を細めた。ふと指輪を見ると、また少し開いている気がする。


気が気ではなかった。

Aは酷く焦っていた。何か神の怒りを買ってしまったのかと。指輪の蕾は彼女の生きてきた中で、一度もピクリともしなかった不動の蕾。
その蕾が、何事もなかったかのように軽やかに、ゆっくりと開き始めている

それは彼女にとって大事件だった。


しかし彼女は、今になっても気付いていなかった。
想いを自覚して尚、根本的な祈りの違いに。


以前は、神に祈っていた。
神に一方的な報せをするように、誰かの平和な未来を願い、健康を願い、幸せを願った。


それらは全て紛れもなく"彼女が神に向けて"祈っている。神によってそれらが彼らに与えられることを。

しかしそれが今や、祈りのほとんどが特定の人間に対するものへと変わった。

彼の平和を。
彼の健康を。
彼の幸せを。

彼女が得意とする絵も、彼ばかりになった。
そして彼女は夢中になる余り、祈りを忘れたのである。



彼を描く事に(・・・・・・)夢中になって、忘れたのである。


神への報せではなく、彼の為の(・・・・)祈りになったのである。



客観視しても、気付きにくい事実だ。
事実、彼女にとって以前の祈りと今の祈りは大差無いように思っている。だが、違った


神にとってこの違いは、致命的な違いだった。

今一度、平凡な日々を→←白い薔薇



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レッドクランチ - 私の中でドストライクの作品だったので終わるのが悲しい(´;ω;`)あっ最高に面白かったです!! (2019年10月7日 19時) (レス) id: 62b41d8f92 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雅榴 | 作者ホームページ:http://なし  
作成日時:2019年9月29日 23時

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