検索窓
今日:3 hit、昨日:10 hit、合計:16,220 hit

ページ12



不死川はすぐには目覚めなかった。

寝室を覗くと、胴体や二の腕に痛ましく巻かれた包帯。眉間にいつもの皺は無く、別人かと思うほど穏やかに眠っている

彼女にはそれが、彼に死を暗示しているようにしか見えず、好きな絵もまともに描けず、絵筆を取ることすら辞めた。


彼女には、わからなかった。

彼女は親を亡くしている。
だが、その実感が薄かった所為なのか、その時ですら絵を描くことをやめなかった。懐かしい日々を描き続け、消えて行く記憶を形に残そうと懸命に描いた。

けれど彼は、不死川実弥は、描く余裕すらも無い。

彼が死んでしまえば
彼と言葉を交わせなくなってしまえば
目を合わすことも出来なくなってしまえば


そう考えただけでも、絵筆を持つ手が震えた。
綺麗だった彼女の目に映る世界は一気に色褪せた。
なんとか描いた絵にもそれは現れるのか、今までで一番味気ないものだった。


彼女は変わらず祈った。

だが、彼女も無意識の内に祈る相手が変わった。


朝、昼、夜。
神に捧げていた祈りが、彼女の人生初めて途切れ、祈りは眠る不死川に向いた。

どうか、どうか早く目を覚ましてください。

彼女は祈る度に、ホロホロと涙を流した。
未だ目覚めない男に静かに泣く女。まるで宗教画のような二人に隠の者達は当惑した。何せ誰にも出来ることはない。
不死川が目を覚ましたときのことを考える他ないのだ。

だからこそ、純粋な彼女が流す涙を誰にも止められなかった





白い薔薇の花弁が微かに開く。

。→←芽生え



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (44 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
40人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 不死川実弥
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

レッドクランチ - 私の中でドストライクの作品だったので終わるのが悲しい(´;ω;`)あっ最高に面白かったです!! (2019年10月7日 19時) (レス) id: 62b41d8f92 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:雅榴 | 作者ホームページ:http://なし  
作成日時:2019年9月29日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。