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不死川はすぐには目覚めなかった。
寝室を覗くと、胴体や二の腕に痛ましく巻かれた包帯。眉間にいつもの皺は無く、別人かと思うほど穏やかに眠っている
彼女にはそれが、彼に死を暗示しているようにしか見えず、好きな絵もまともに描けず、絵筆を取ることすら辞めた。
彼女には、わからなかった。
彼女は親を亡くしている。
だが、その実感が薄かった所為なのか、その時ですら絵を描くことをやめなかった。懐かしい日々を描き続け、消えて行く記憶を形に残そうと懸命に描いた。
けれど彼は、不死川実弥は、描く余裕すらも無い。
彼が死んでしまえば
彼と言葉を交わせなくなってしまえば
目を合わすことも出来なくなってしまえば
そう考えただけでも、絵筆を持つ手が震えた。
綺麗だった彼女の目に映る世界は一気に色褪せた。
なんとか描いた絵にもそれは現れるのか、今までで一番味気ないものだった。
彼女は変わらず祈った。
だが、彼女も無意識の内に祈る相手が変わった。
朝、昼、夜。
神に捧げていた祈りが、彼女の人生初めて途切れ、祈りは眠る不死川に向いた。
どうか、どうか早く目を覚ましてください。
彼女は祈る度に、ホロホロと涙を流した。
未だ目覚めない男に静かに泣く女。まるで宗教画のような二人に隠の者達は当惑した。何せ誰にも出来ることはない。
不死川が目を覚ましたときのことを考える他ないのだ。
だからこそ、純粋な彼女が流す涙を誰にも止められなかった
白い薔薇の花弁が微かに開く。
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レッドクランチ - 私の中でドストライクの作品だったので終わるのが悲しい(´;ω;`)あっ最高に面白かったです!! (2019年10月7日 19時) (レス) id: 62b41d8f92 (このIDを非表示/違反報告)
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