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2-2 ページ8

「え…?」



ヴン…とローを中心に展開された、薄水色の膜のようなドーム。

ローが小石を2つ上に放って「爛轡礇鵐屮襯梱」と唱えると、その石と2つの人影が入れ替えられた。

そのせいで急に宙に浮くことになったその2人は、不意に地面にたたきつけられる。



(あれって…シャチとペンギン!?)



叩きつけられて気絶してしまったその人影が、自分の家の居候達だと気づいてAは唖然とする。

ローと何かトラブルがあったのだろうか。

不安になりながら、Aは木の影から様子を見る。

立ち去ろうとするローに事情を聞こうと、思ったが次に見た光景が信じられず思わず隠れてしまったのだ。



(シロクマが喋って…!!?)



信じ難い光景に目を見開いて呆然としていたが、Aはそのシロクマがボロボロなことに気づく。

怪訝そうに首を傾げるが、直ぐにその理由がわかった。

シャチの手に握られていたバット。



(あんの馬鹿…!!)



なんとなく大体の事情を察して、Aは頭を抱えた。

ローとシロクマが立ち去ったのを確認して、Aは木の影から姿を現す。



「はぁ…起きな、馬鹿!!」

「うぅ……。」

「……A…?」



気絶した2人を刀の鞘の方で小突いて起こすと、Aは2人の手を引いて体を起こさせた。



「こんなところで油売ってないで、早く帰るよ。」

「え?あぁ…。」

「ほら、荷物持って!」

「お、おう…!」



町で買った野菜と肉を2人に持たせて、Aは先導して自分の小屋の方へと向かっていく。

ローの見せたあの能力に思いを馳せながら。



(……あの能力…知ってる…。)



わりと最近だ。

昔馴染みから聞いたものだ、と。

それを探している、と言っていた。

ドクン…ドクン…とうるさくする心臓を押さえつけて、Aは雪原を踏みしめる。



「…A?」

「どうしたんだ?顔色が…。」

「…大丈夫だよ…!」



顔色が悪くなっていくAを心配して、シャチとペンギンは声をかける。

そんな2人に青い顔で笑顔を作って、Aは笑いかける。



「大丈夫だから、ね。」



2人にも自分にも言い聞かせるように、Aは言葉を絞り出した。

最近連絡の無い、よく煙草の匂いを漂わせるもう1人の大切な人を思い浮かべて。



(……ローが来る…ちょうど3日前。…子供の足なら、ミニオン島まで…歩きで三日三晩…。)



脳内に過ぎった嫌な可能性を捨てるように、Aはかぶりを振った。



「まさかね。」

2-3→←第2話6人家族になるまで



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睦月(プロフ) - マリンさん» コメントありがとうございます!! そう言っていただけて嬉しい限りです(´˘`*) これからも頑張っていきます!! (2021年5月31日 8時) (レス) id: e2feea5660 (このIDを非表示/違反報告)
マリン(プロフ) - ド直球に心に来ました!書き方からなにから全て凄く好きです!これからも無理せず頑張ってください (2021年5月31日 4時) (レス) id: 999a9c72ec (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:睦月 | 作成日時:2021年5月30日 8時

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