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「…あん時はありがとな。」

「…あぁ、あの時の。」



Aとヴォルフに拾われて1週間。

ローはすっかり調子を取り戻していた。

ヴォルフから「調子が戻ったんならAに礼でも言ってこい」と言われて、ローは森の入口で彼女を待っていたのだ。

Aはプレジャータウンの酒場で働いているが、ローはまだ町におりたことは無い。

まだ少し、遠慮というか恐怖があったからだ。



「もう体はいいの?」

「あぁ、お陰様で。」

「えっ…と、名前を聞いてなかった。私はA。姓は知らない。別段珍しい事じゃないでしょう?」

「俺は…トラファルガー・ロー。」

「ローか。イカした名前だ。」



ヴォルフに名乗った時と同じ反応をAがするものだから、ローは少し驚いた。

その時、Aの腰の辺りからカチャと金属がなる音がした。

そこには柄、鍔、鞘の全てが暗赤色の刀が携えられている。



「…あんた…剣士なのか?」

「え?あぁ…(これ)ね。うちの家系に伝わる刀なんだ。野生の動物でも出たら困るだろ、って携帯するように居候に言われたの。真っ赤で気味が悪いでしょう…この刀も、私も。」



その言葉にローはどきりとした。

心を見透かされたような気がして。

しかし、次のAの言葉に彼は驚くことになる。



「でもいいの。私のことをまだ少しも知らないローは、私を見た目で判断するしかない。」

「…!!」

「前は刀を突きつけて悪かったよ。ヴォルフは私の命の恩人なんだ。私もまだ、ローを内面で判断するには情報が足りなくて…あの光景にカッとなってしまった。」



「ごめんね」と謝るAに、ローは気味悪さを感じていたことを申し訳なく思った。

Aは話してみれば少し姉御肌を感じさせる、普通の少女だった。

少し会話をしながら、ローはヴォルフの家に、Aは自分の小屋に戻るため歩き始める。



「ロー、歳は?」

「13だ。」

「私は15。13かぁ…それにしちゃ小柄だと思ったけど、まぁこれから伸びるだろうね。」



ザクザクと雪を踏む音に負けないように、2人は少し大きな声で他愛ない会話をする。

自分は長男だし意識したことはなかったが、姉がいたらこんな感じだろうか…とローは少しだけくすぐったく感じた。



「私も4年前にこの島に来たよそ者だけど、この町の人は皆あたたかい人だよ。気持ちが整ったら町におりてきたらいい。」



ローの心情を知ってか知らずか、最後にAはそう彼に言って別れた。

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睦月(プロフ) - マリンさん» コメントありがとうございます!! そう言っていただけて嬉しい限りです(´˘`*) これからも頑張っていきます!! (2021年5月31日 8時) (レス) id: e2feea5660 (このIDを非表示/違反報告)
マリン(プロフ) - ド直球に心に来ました!書き方からなにから全て凄く好きです!これからも無理せず頑張ってください (2021年5月31日 4時) (レス) id: 999a9c72ec (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:睦月 | 作成日時:2021年5月30日 8時

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