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目の前の光景に、ローは少し驚きながらも呆然とそれを見ていた。



「これで、毒なんぞ入ってないと分かったろう。」



そう言うとヴォルフはもう一度、ローにスープとスプーンを差し出す。

ローは震える手でスプーンを握った。

そっとスープに口をつければ、口内にスープの旨味が広がる。



「ちくしょう……美味ェ…美味ェ!!」



肉や野菜を掻き込むようにして、ローはスープを飲み干した。

その様子を見て、Aは優しく笑う。



「ヴォルフ、スープのおかわり持ってきてあげなよ。あとペティナイフを貸して。町でリンゴを買ってきたんだ。食べるでしょう?」



笑ったAにローが頷けば、彼女はより柔らかく優しく笑った。



──────
───




「…あんたら、俺を助けてくれたのか。」



スープで腹を満たし、ヴォルフに言われるがまま風呂に入ったロー。

ヴォルフの用意した服に着替え、ローとヴォルフ、そしてAはそれぞれ椅子に座っていた。



「ふんっ!わしはそこのAが随分と焦った様子でお前を連れてきたもんだから、スープと寝床を用意してやっただけじゃ。」

「…仕事から帰ろうと歩いてたら、洞窟の方から嫌な予感がしたんだ。行ってみたら、悲鳴が聞こえて…洞窟の中にあんたが倒れてた。」

「そうか…。」



純粋に善意で自分を助けてくれた2人に、ローはなんだか申し訳ない気持ちになった。

そんな恩人2人に、返り討ちにあったとはいえメスを向けて、警戒心丸出しだったのだから。



「私、もう家に戻るよ。ヴォルフ、助けてくれてありがとう。この借りは…次の買い出しは私が行く、でどう?世の中はギブ&テイク、なんでしょう?」

「ああ、構わん。そうしよう。」



Aはローにあらかたの事情を説明すると、席を立った。

家に待たせている人間がいるから、と。

ヴォルフにローを助けてもらった借りを返す約束をして、Aは去っていった。



「…なぁ、じいさん。あいつは…一体何者だ?」

「…Aは、4年前にこの島に漂流してきたんじゃ。嵐で船が転覆したとかで、海に放り出されたと言っておった。1人で船に乗っておったようじゃが、その経緯は話したがらんかったのう。まぁ、言いたくないことを無理に聞く趣味もないから、深くは聞かんかった。」



ヴォルフの言葉に「そうか」とローは声漏らす。

それでも得体の知れない彼女が、ローは少しだけ気持ち悪かった。

1-3→←第1話狎屬ぞ女



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睦月(プロフ) - マリンさん» コメントありがとうございます!! そう言っていただけて嬉しい限りです(´˘`*) これからも頑張っていきます!! (2021年5月31日 8時) (レス) id: e2feea5660 (このIDを非表示/違反報告)
マリン(プロフ) - ド直球に心に来ました!書き方からなにから全て凄く好きです!これからも無理せず頑張ってください (2021年5月31日 4時) (レス) id: 999a9c72ec (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:睦月 | 作成日時:2021年5月30日 8時

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