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「少しは安心したか?」
今朝までの冷たい感じとは違って、柔らかい笑顔でヴォルフは言った。
「この町はな、17年ばかり前に一度滅びかけたことがある。…ろくでもない海賊のせいでな。その事件の後で、標語が作られた。
“誰もが喜べる町を。誰もが優しくあれる町を。”
とな。だから、喋るシロクマがいるくらいで、町の人間は嫌な態度をとったりしないしないわい。4年前、自分以外全てが敵だと思っておった、Aにも同じことを言ってやったわ。」
その言葉にロー達は一番後ろを歩いていたAを振り返る。
Aはふわりと優しく笑った。
「いくら言われても、私は実際に町におりるまで…また怖がられるんじゃないか、って不安が消えなかった。だから皆にも同じようにした。誰かからの優しさは…とても、温かいって知って欲しかったんだ。」
真っ赤に燃えるような真紅の髪と瞳。
それは美しく靡いて、爛々と輝く。
綺麗だと、思った。
「ありがとう、A。」
自然と、その言葉がローの口からこぼれた。
──────
───
─
その後、彼らは町の駐在所で労働に必要な書類を書いた。
ヴォルフの名前の下には、既にAの名が書いてあり、それに続いてロー達も自身の名前を書く。
なんだかそれが家族のようで、ローは擽ったさを感じた。
そして、ヴォルフは一人一人に付き添って、彼らの希望する職場をまわった。
ヴォルフがロー達が真っ当な人間であることを懸命に説明したおかげで、あっさり仕事は決まった。
ローは町の診療所、ベポは工事現場、ペンギンはレストランのウェイター、シャチは美容院の雑用。
特に診療所は、Aの働く酒場と近くで、ローはなんとなく安心できた。
「美容師の仕事って前から憧れてたんだ!技を盗んだら、お前達の髪も切ってやるぜ!」
「シャチは手先が器用だからな。向いてるんじゃないか?俺もウェイターの仕事はやってみたかったけど…A、アドバイスしてくれよな。」
「あのレストランの人達は皆優しいから大丈夫。」
「工事現場の仕事…ドリルとか、ショベルカーとか使わせてもらえんのかな!?」
シャチもペンギンもベポも今朝の不安なんか忘れた様子で浮かれている。
ローも医療に関われるということで嬉しそうだった。
そんな様子を、Aとヴォルフは優しい眼差しで見つめている。
「A、心の準備はいいか。」
「うん…いつでも。」
Aはそっ、と自身の刀に触れた。
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睦月(プロフ) - マリンさん» コメントありがとうございます!! そう言っていただけて嬉しい限りです(´˘`*) これからも頑張っていきます!! (2021年5月31日 8時) (レス) id: e2feea5660 (このIDを非表示/違反報告)
マリン(プロフ) - ド直球に心に来ました!書き方からなにから全て凄く好きです!これからも無理せず頑張ってください (2021年5月31日 4時) (レス) id: 999a9c72ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:睦月 | 作成日時:2021年5月30日 8時