第3話犧は昔 ページ14
ヴォルフの提示した不思議な条件で、5人の子供達は彼の家で共同生活を始めた。
ヴォルフのギブ&テイクの信条で、家事やヴォルフの発明を手伝いながら。
「ペンギン、てめェ!そのワニの肉何切れ目だよ!!」
「知らねェよ!こんなもんは早いもん勝ちだ!!」
「ちょっと待てよ!ペンギンもシャチも3切れずつ食べてるだろ!!」
「うっさいあんた達!! 肉は1人3切れずつ作ったって言ったでしょうが!! ロー、あんたそれ4切れ目でしょう!!」
「んぐっ!?」
彼らの夕飯の時間はいつも賑やかだった。
大抵発端はベポ、シャチ、ペンギンの食べ物の取り合い。
皿が足りないという理由で、いつも大皿に盛られる料理は毎回争奪戦だ。
それをAが1番大きな声で叱って、げんこつを食らわせる。
ローもしれっと言われた取り分以上の肉をとるが、いつもAにバレて、いつも彼女とヴォルフに一番怒られていた。
「ロー!あんたね…3人の親分なんだったらちゃんとしな!」
「世話係まで引き受けた覚えはない。」
「ええい!生意気な…!! ああ、わしの平穏な生活はもう帰ってこないのか…。」
2人に怒られるローを部屋の隅で申し訳なさそうに3人は見ていたが、また次の日にはすっかり忘れて同じようにうるさくする。
その繰り返しだった。
しかし、皆それがどこか心地よかった。
そのせいで、いつの間にかこの共同生活を始めて2ヶ月経っていたことに、ローは気がついた。
「もう2ヶ月経ったんだね。」
朝起きてぼーっとカレンダーを眺めているローに、Aが声をかける。
「早いなぁ」なんて呟いて、Aは薄桃色のエプロンを付けるとキッチンに立った。
一緒に暮らし初めて、料理はほとんどAの担当となっていた。
その背を眺めて、ローはキッチンに立つ母の後ろ姿を思い出す。
カチャカチャと卵を溶く音や、それをフライパンに流し込んでジュウッと鳴る音は聞いていて懐かしかった。
「ロー、私とヴォルフ、今日遅くなるから。」
「あぁ…。」
ローの方を振り返って言うA。
最近、ローはその言葉をよく聞く気がしていた。
昨日、ベポが2人の体を気遣っていたのを思い出す。
「洗濯と掃除と…あぁ、ヴォルフが畑の野菜の様子を見ておいてくれって言ってた。」
「わかった。俺達でやっておくよ。」
「ありがとう。」
そう言って優しく微笑むAに、ローはどこか愛おしさを感じていた。
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睦月(プロフ) - マリンさん» コメントありがとうございます!! そう言っていただけて嬉しい限りです(´˘`*) これからも頑張っていきます!! (2021年5月31日 8時) (レス) id: e2feea5660 (このIDを非表示/違反報告)
マリン(プロフ) - ド直球に心に来ました!書き方からなにから全て凄く好きです!これからも無理せず頑張ってください (2021年5月31日 4時) (レス) id: 999a9c72ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:睦月 | 作成日時:2021年5月30日 8時