Prolog狒瓦討始まった日 ページ1
○月✕日
その日は雪が降り続けて何日か経っていた。
スワロー島に来てもうすぐ4年。
私はプレジャータウンの酒場で働きながら、少し前から食べ盛りのクソガキ2人…と言っても私と同い歳と1つ下の男達を匿って生活していた。
今日も酒場での労働を終えて、森の小屋に帰ろうとしていた時。
ぞわり、となんだか嫌な気配が森の洞窟の方からした。
最近、何度かそういう感覚を感じていた。
だんだんと嫌な予感は強くなって、ザクザクと積もった雪を踏み締めて私は走った。
足を取られて転けそうになっても、その足を止めなかった。
そして、海岸に出て、洞窟が見えてきた時。
うあああああああああああああああ!!
酷く苦しそうな悲鳴が聞こえた。それにゾッとして、思わず私は岩陰に隠れた。
誰かが襲われているのだろうか。いや、それなら洞窟から這い出てくるはずだ。獣ならその鳴き声だって聞こえるはず。
そんなことを考えながら、私は洞窟の方を覗いていた。
刀を持ってくればよかったかな、と後悔しながら、私は先程の叫び声が聞こえてから何の動きもない洞窟に近づいた。
だって本当に人が襲われていたのなら助けなくてはならないと思ったから。
そっと洞窟の穴のそばまで行くと、静かに中を覗いた。
ツン、と鼻をつく鉄臭さがして、血の匂いだとすぐにわかった。
……誰かいるの?
恐る恐る声を発するが、応答は無い。
その代わりにパチ…パチ…と焚き火が燃える音が聞こえた。
人が居るのは間違いないだろう、と思って私はその洞窟に足を踏み入れていく。
そして、そこに倒れる少年を見つけた。
私は直ぐにその少年に駆け寄った。
体を揺すってみたが、少年はう…と小さく声を漏らすばかり。
眠っているようだった。
しかし、こんな寒い場所で眠っては命に関わる。
私はまだ小柄なその少年を自分のコートに包んで抱えると、直ぐに走り出した。
血の匂いとか気になる事はあったけど、今はそれどころではない。
白い吐息、寒さでジンとする鼻、ぶるりと体が時々震えたけど、そんなことは気にならなかった。
私は走った。
自分の小屋ではなく、たった1人頼りになる大人の元へ。
ヴォルフ…!! この子を助けて!!
死んで欲しくなかった。
昔の自分と重なったこの子に。
これが、全てが始まった日。
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睦月(プロフ) - マリンさん» コメントありがとうございます!! そう言っていただけて嬉しい限りです(´˘`*) これからも頑張っていきます!! (2021年5月31日 8時) (レス) id: e2feea5660 (このIDを非表示/違反報告)
マリン(プロフ) - ド直球に心に来ました!書き方からなにから全て凄く好きです!これからも無理せず頑張ってください (2021年5月31日 4時) (レス) id: 999a9c72ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:睦月 | 作成日時:2021年5月30日 8時