五線譜 (ページ10)

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まぁそんな状態の恋人を放っておける訳はなく、とりあえずうちに連れてきたって訳。

もちろん彼のマネージャーには、俺のマネージャー伝いに連絡をとった。

耳のことすら話してなかった様だからその話は避けたけど、とりあえず松村さん疲れちゃったみたいだから俺の家でしばらく預かりますねってことで納得してもらった。

引退発表からの行方不明で警察に届けられてしまっても困るし。

ただ、彼のマネージャーと連絡をとったことは北斗には内緒だ。

という訳で、半強制的に俺たちは同棲生活を始めることになった。

風呂から上がると北斗はソファに背中を預けて、ラグを敷いた床の上にペタンと座っていた。

眠たそうに目を擦る姿はやっぱり可愛い。

髪はまだしっとりと濡れていて、北斗を足で挟み込むようにソファに座り、ドライヤーを手に取った。

熱くないかを手で確認しながら、丁寧にドライヤーをかけていく。

前髪を乾かす時、ふと彼の顔を除くと、気持ちよさそうに目をつぶっていて、なんだか子犬みたいだなと思った。
ついでに最近青に染めた自分の髪もがしがしと乾かした。

「ほくちゃーん、ベッド行くよ？」

「んー」

「ほら、おいで」

立ち上がって、彼の手を引き、寝室に入る。
俺のセミダブルのベッドに彼を寝かせ、おやすみ。と部屋を出ようとしたところで、布団から顔を出した北斗に呼び止められた。

「じぇし、どこいくの」

「俺はリビングで寝るから、ね？ゆっくり寝なね？」

「いっしょにねないの？」

「He？一緒に寝ていいの？俺襲っちゃうかもよ？？」

「いーよ、おれがおそっちゃうかもね」

気を遣わせたくなくてわざとふざけたんだけど、見事返り討ちにあった。

「じぇし、はやくこっちきて」

って言うもんだから、北斗の隣にお邪魔する。
俺のベッドに俺がお邪魔するってのもなんか変だけど。
さすがにセミダブルベッドに大男2人は狭い。人と寝る前提で買ってないもの。
必然的にぎゅうっとくっつく形になって、近くて、なんだかドキドキして。

北斗の様子をこっそり盗み見たつもりがばっちり目が合って、暗闇でもわかるほど2人で真っ赤に顔を染めた。

「ぎゅってして？」

そんな顔で可愛いことを言うもんだから、もう大混乱。
おずおずと伸ばした手で、ぎゅうっと抱きしめると俺の胸に耳を寄せて、

「よかった。まだ聞こえる。ジェシーの音まだ聞こえる。ずっと聞いてたい。」

って何度も繰り返してふにゃっと笑うから、俺が泣きそうになった。