五線譜 (ページ8)

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年末のこのテレビ番組はもちろん、コンクールやコンサートで立ち慣れたこの舞台。

スポットライトを浴びるのも、拍手を浴びるのも、今日が最後なんだ。

そう思うと少し涙がこぼれそうだったけど、隣にいたジェシーが目を合わせて微笑んでいてくれたから。

何とかこらえることが出来た。

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フィナーレを終えて楽屋に戻れば、年が明けるまで残り10分。

新しい年をむかえる瞬間、ピアニストでなくなる瞬間はやっぱりジェシーに隣にいて欲しい気がしたから、彼の楽屋にお邪魔しようと立ち上がり楽屋のドアノブに手をかけたところで、ちょうどノックされる扉。

「Hehe、年越し一緒にしたくて来ちゃった」

頭をポリポリかきながら、ちょっと照れてるジェシー。

俺も同じこと考えてた。って言おうかと思ったけど、なんだか恥ずかしくて辞めた。

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5！4！3！2！1！

「HAPPY NEW YEAR！！」
「あけましておめでとう」

2人だけの年越し。

俺が俺じゃなくなる瞬間を1人過ごす勇気がなかった俺に気づいてジェシーは一緒にいてくれたんだな、と思った。

耳の調子がおかしいと自覚してからキンキンとなり続けている耳鳴りも、ジェシーといる時だけは少し和らぐような、そんな気がした。