五線譜 (ページ11)

今日:3 hit、昨日:15 hit、合計:22,564 hit

11 ページ11

北斗と暮らし始めてわかったこと。

食べるより寝るのが好き。
眠たい時は特に甘えん坊になる。
頭を撫でられるのが好き。
人前ではクール。
トマトが嫌い。
何より音楽が好き。

.

話を聞けば、年末には既に右耳はほとんど聞こえていなかったらしく、左耳の聴力も徐々に落ちていたらしい。

年明けと共に彼の耳はどんどんと音を零すようになった。

毎朝、俺の胸に耳を当てて、まだ聞こえる。大丈夫。って呟く姿が痛々しくて、支えるって決めたのは俺なのに、何もしてやれない無力感で、俺まで押し潰されそうだった。

一緒に住み始めて1週間ほどしたある日、仕事から戻ると、北斗は俺の仕事部屋を覗いていた。

「あれ、ほくちゃん何してるのー？」

仕事部屋に置いてあるのは作曲に使うためのギターだったり、キーボードだったり。マイクやらなんやらもあって、PCで音楽を打ち込めるようにしてあって、デモ曲は大体ここで作ってる。

その部屋を熱心に覗いていて俺の声にも気づかないようだった。

覗きはするのに、部屋には1歩も入らず、廊下から見てるだけな所が、北斗らしくて可愛くて、ほくちゃんただいまって軽く肩を叩いた。

「わっ！ごめんなさい！」

飛び上がるほど驚いて、怒られた子犬のような顔でこちらを見るもんだから思わず吹き出す。

「Daha！！」

「なーんで笑うの」

「可愛かったから。この部屋気になる？」

「勝手に覗いてごめんなさい」

「いーよ、ここは北斗の家だから。使ってみたい？」

そう聞くと、こくこくと頷く北斗。

PCの電源を入れて、一通りの使い方を説明すると、カタカタとキーボードを操作して、音を打ち込み出した。

音楽に触れている北斗はやっぱりどんな瞬間よりもキラキラしていて、彼から紡ぎ出される音楽は魔法のようだった。

やっぱり北斗は音楽を渇望していて、繋がっていて、在り来りな言葉だけど、彼は天才だ。

北斗から音楽を奪うなんて、神様そんな意地悪しないでよ。