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なかなか喋り出さないりょうくん。

私はりょうくんの口元や瞳を見つめることしか出来ない。

次第に、りょうくんの緊張が伝わってきた。

つられてもっと緊張してしまう。


どうしたの、りょうくん。

ミルフィーユは、食べないの……?


「A。」

……また、私の名前を呼ぶりょうくん。

変だな、変すぎる。

「はい。」


返事をした。

すると、りょうくんの唇が動いた。


「Aは、初めて会った時からずっと魅力的で、それから今までもずっとAのことしか考えられなかった。会えん日が沢山あったとき、ほんとに寂しかったしAがいないとダメだって気づいた。それほど好きなんだよ。」


……いきなりの告白に驚く。

なんだか頭が真っ白だ。

今の私には黙ってりょうくんの言葉を聞くしかない。



「今まで、将来のこととかあまり話してなくて、もしかしたらAのことを不安にさせてたかもしれない。」


うん、そうだよ。

りょうくんとの将来をずっと考えてるの、私だけだと思っとった。


「こんな俺だけど……」


りょうくんはそう言って、スーツの内ポケットから小さな白い箱を取り出した。

……これって、


「俺と未来を一緒に生きて欲しい。」

箱が開く。

中には小さく輝くシルバーの指輪が。




「結婚してください。」




あまりにも突然で。


驚いてずっと声が出なかったけれど。


ドラマのようなシチュエーション。


りょうくんの一言一言が胸に刺さって、締め付けられている。


私は差し出されたその箱の中身をもう一度見つめる。


そうしてまた、りょうくんの瞳を見つめて言った。


「はい……!!」



あれ、視界が滲む。

私は、泣いているの?


涙を拭っていると正面にいたりょうくんがいつの間にか私の座る席の隣で膝まづいていた。


「え、りょうく」


「左手、出してください。」


りょうくんが手を差し出す。

私は頷いて左手をりょうくんの手の上に差し出した。


薬指にはまっていく指輪。


こんなに幸せな気持ち、初めてだ……。



「……っ」


また、涙がこぼれて止まらない。


「泣き虫だなあ。」

そう言って笑いながら私の涙を拭ってくれるりょうくん。

愛しくてたまらなくて、つい抱きしめてしまった。


「わ。」


りょうくんは驚いたようだったけどすぐに背中に手を回して抱きしめてくれた。


あれ……周りの声が聞こえてくる。

パっとりょうくんと離れて見渡してみると、他のお客さんが私たちを見ていた。

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作者名: | 作成日時:2020年5月7日 2時

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