【d!】性悪努力家ヒロイン【wrwrd】 (ページ6)

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「───で、どうする？」

担任である教師は優しく目を細めながらそう問い、私の答えを待った。
私は転校生だ。学級組織を決めなければいけないのだが、今空いているのは放送委員と保険委員だけらしい。もしそのどちらも嫌ならば───もうすぐ開催される生徒会選挙に参加すればいいらしい。選挙で落ちた場合には、その空いているどちらかになる。

「ああ、でも生徒会はやめた方がいいかも」
「どうしてですか？」
「生徒会は今、ほとんどアイドル状態なんだ。一人を除いて全員男子だからね」
「へえ……で、その一人の女子って───アイナさんですか？」
「そ、そうだけど……知ってたの？」

目を見開いて驚く担任の言葉に、首を横に振って否定した。今まで見てきたいくつもの小説では、こんなの当たり前だった。特に主役である彼らの小説───その中でも夢小説の類では───ヒロインは彼らの中の唯一の女子という場合が多い。
普通に考えて反感を買う立場ではあるが、ヒロイン補正が働いているらしく彼女は無傷で、悩んでいる様子も無い。流石だとしか言いようがなかった。

「私、生徒会書紀に立候補します。落ちた場合はまた後日考えます。それでいいですか？」
「うん、いいよ。君が好きな委員会に就けばいい」

担任の暖かい眼差しから、思わず目を逸らした。心苦しいが、いつかはこの優しい人までを利用しなくてはいけない時が来るかもしれない。瞬きをして気分を落ち着けると、会釈をして席へ戻った。
どうしても視線がコネシマさんに移ってしまう。このクラスに居る"主役"は彼だけだからだろうか、他に見る人なんて───あの"ヒロイン"を除けば───コネシマさんしか居ない訳だし。
楽しそうに騒ぎ立てるコネシマさんから無理矢理目を離す。間違えても、私が彼の事を好きだと、他の人に思われてはいけない。私は実況者である彼のファンであり、リアコではないのだから。
厚い本を開き、一瞬だけ、ちらっとコネシマさんに視線をやった。すると目が合ってしまい、彼の満足そうな笑顔が返ってくる。
貴方の姫は彼女だろう、私にそんな笑顔を向けないでくれないか。