【d!】性悪努力家ヒロイン【wrwrd】 (ページ5)

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ホームルームの時間が終わり、ようやく質問攻めから開放されると思えば、私の席の周りにはあの"ヒロイン"とその取り巻き達が集まっていた。
見たところ悪い人達ではなさそうだが、どうもこういう女の子は好きになれない。前からずっとそうだった。
彼女達は楽しそうに話しながら質問をし、私が答える度に大袈裟な反応を残す。居心地の悪さに顔を顰めそうになるのを堪え、ただ笑みを浮かべて相槌を打った。
ああ、面倒だな、なんて思いながら話が終わるのを待っていると、そういえば、とヒロインの彼女が思い出したように目を輝かせた。

「私の名前、覚えてる？」
「ああ───もちろん、覚えてるよ」

先程の質問タイムの最中では、このクラスの一人一人に自己紹介をして貰っていた。確実に彼女も自己紹介をしていたはずだ。確か名前は───アイナ。

「アイナさん、だよね」
「正解！覚えて貰えて嬉しいよ！」

あんたの事は何があっても忘れないだろうね、と心の中で付け加えた時、一限目開始のチャイムが鳴った。
クラスメイトが次々と席に戻るこの音は、まるで巻き戻しの魔法みたいで面白い。前にそう言った時は笑われてしまったのだが。
間の抜けた教師の声に耳を傾け、面倒な授業を乗り切ろうとシャーペンを手に取った。

「なぁ、なぁ、Aちゃん」

聞こえてきた声に、はっとして顔を上げた。声の主はすぐに分かった───画面越しだったが、何度も聞いてきた声───コネシマさんだった。
キラキラと空色の目を輝かせて私の名前を呼ぶ姿はまさに犬のようであり、つい笑ってしまいそうになるのを堪える。
目の前には憧れの彼が居て、こうして話し掛けてくれているのだ。笑うよりも先に、あの神様に感謝するべきだろう。

「何？」
「へへ、何でもないわ」

本当にこんな風な声を掛ける人が居たなんて、と驚いて口を噤むと、コネシマさんは満足そうに笑って、隣に座る彼女───アイナに話し掛け始めた。アイナは慣れているらしく、恐らく皆の憧れの的であるコネシマさんに声を掛けられても全く動じない。それどころか、授業中だからと話すのを断っている。
なんて羨ましいんだろう。彼女は望まなくとも彼ら"主役"に愛されるヒロインなのだ。悪役として選ばれてしまった私とは違って、彼女には明るい未来しか無い。私のように誰かを利用して、蹴落そうとしなくとも、アイナには最高の結末が約束されている。