5 ページ5
*
｢Aちゃん、俺一瞬店出るから何かあったら電話してな｣
店長が店の中からそう言うと、Aが明るく返事をする。
人がいなくなったのをええことに、俺は彼女を自分のスマホに収める。
シャッター音に気づいたAが嫌そうな表情をするから、俺はとぼけた顔をした。
｢もう〜恥ずかしいから｣
｢ええやん可愛く撮れてるって｣
ふくれっ面を向けられるけど、
正直そんなの可愛いだけでなんの効果もない。
すると、Aは被っていたサンタ帽を無理やり俺にかぶせてきた。
｢大ちゃんの写真も撮ったげる｣
｢いや俺は要らんやろ｣
｢ダメ〜そこ立ってって、はいチーズ｣
｢おお〜可愛い！｣と言いながら見せられた画像は、
めっちゃブレてるし俺は変な顔をしてる。
あまりの写りに大笑いした俺に、満足気な微笑みを向けたA。
｢ホーム画面にしよ〜｣
｢ええて｣
｢これ見て今日は頑張る｣
真っ直ぐな目で、とびっきりの笑顔で、
そんなこと言われたら、俺もうなんも言われへんて。
｢こちら良かったら！｣
突然目の前に差し出されたチラシに、俺の意識が現実に戻ってきた。
キラキラとしたケーキの写真が並んでいる。
…あれからホールケーキなんて食べたっけ。
混み合う大通りを歩く俺の足は重くなる。
どのケーキ屋を見ても、あの小さなサンタの姿は無い。
握った拳が、チラシにシワを作った。
俺は顔を伏せて、また帰路をたどった。
*
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 62人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
miichi(プロフ) - 読みながらウルウルしちゃいました！続きが読みたくなります！ (2022年12月26日 18時) (
レス) @page13 id: 18c95e1595 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まるこ。 | 作成日時：2022年12月24日 20時
