サンタになった君へ。〈赤〉 (ページ1)

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彼女がサンタになってから、

5年が経った。

一体どこを回ってるんやろう。

迷子になったんかな。

5回もクリスマスが来たのに、

一度も俺の元にプレゼントは届かへん。

いい子にしてるはずなんやけどな...って、もう貰える歳じゃないわな。

笑ってそんなことを呟けば、

もう1人の自分が俺を呆れた目で見る。

客観視してみれば、俺はいつまでも未練を引き摺った女々しい男や。

大学を卒業して、社会人になって、

毎日毎日同じことの繰り返し。

まるでロボットみたいに

人の指示をその通りにこなし、ただ真っ直ぐ家に帰って寝る。

そんな人生でも、あの季節が来れば

彼女が、

Aが近くにおるような気がした。

｢私いつかサンタさんになりたい｣

至極真剣な顔でそう言ったから、俺は吹き出した。

｢サンタさん？｣

｢うん！やってさ、一日で何人のちっちゃい子達を幸せにしてると思う？

それに、子どもの幸せそうな顔見たら、
お父さんもお母さんも幸せになれるやろ？｣

｢そやけど...世界中回らなあかんねんで？
アンタ方向音痴やのにできんの？｣

｢…そこは、トナカイさんが何とかしてくれる｣

ちょっと意地悪なことを言えば、

Aの可愛い顔が見れるから、俺は余計に意地悪になる。

｢煙突で足滑らせてそうやな〜｣

｢じゃあその時は…大ちゃんがちゃんと手握ってて｣

冗談混じりの会話のはずが、

キラキラした目でそんなことを言われたせいで

ドキッとしたのを覚えてる。

Aはサンタになったんや。

Aに会えなくなったあの日から

ずっと、俺はそう思ってる。

そう思い続けて、今に至る。

毎年、イルミネーションに煌めく街が、

聖なる夜に浮つく男女が苦手やった。

彼女に出会うまでは。

Aが大好きなクリスマスやから、

Aの顔が浮かんできて、不思議とこの季節が嫌やなくなったんや。

*