第15話*あげるよ ページ15
謙信さんの後ろを着いていくように本殿に入ると、姿こそ見えずともヒリつくような視線を痛いぐらいに感じる。
向こうの加州は手入れや出陣といった最低限の日課をこなすだけにしてくれと言った。しかし、向こうからの干渉や襲撃は承認しなければならない。圧倒的にこちらの分が悪いが、謙信さんの頼みを聞くために周囲に警戒しながら進んで行った。
「ぼくたちのへやはここだよ。ふたりにはなしてくるね」
一室の前で止まった謙信さんは、部屋に入って行った。
その瞬間、私の周りにいた三振りが抜刀する。
「国広、数は?」
「太刀二振り、打刀一振り、短刀が一振り。僕が短刀を引きつけるから、兼さんと山姥切さんはあとの三振りをお願いね。」
「承知した」
話をしてすぐ、堀川くんの姿が青白い姿とともに消えてしまう。兼さんもすぐに刀を交えているし、長義さんも太刀二振り相手に対抗している。
「何しに来た!みっちゃんに何する気だ!」
「太鼓鐘さん。私達は謙信さんに依頼されて来たんだよ。手入れしに来たんだ。」
「人間の施しなんかいるか!」
警戒するその大きな瞳からは人間への憎しみが込められている。それに、彼も中傷とまではいかずとも傷口が滲んで白い衣装の所々が血で汚れていた。
「堀川くん、太鼓鐘さんの手を離してあげて。まずは彼から手入れする」
「ッ、だから!施しはいらないって!俺たちに借りを作ろうなんて思うなよ!」
「施しでも借りでも何でもない。恩なんて思わなくていい。
これから此処で暮らすんだし、私にできることなら何だってやるよ。この身でよければあげるよ」
力を込めて、彼の霊力に適応する。
まるで血液が巡るような感覚に、思わずぞくりと身震いすらする。
「はいおしまい。軽傷だからすぐに終わった。」
「……」
「太鼓鐘さん?」
「助けてくれたことには、感謝する。ありがとな」
「あ……」
「行こうぜ、伽羅。鶴さんもそろそろ遠征から戻ってくる頃だろうし」
そう言って兼さんと対峙していた大倶利伽羅さんは刀を仕舞い、太鼓鐘さんと一緒に行ってしまった。
「言っておくけど、俺たちは無傷だよ。だから手入れは無用だから。」
「俺も小竜と同じだ。お初にお目にかかるよ、新しい審神者殿」
「はい。小竜景光さんに、大般若長光さん」
こうしてこの場に残った本丸の刀は、彼等二振りだけとなった。
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ゆきな(プロフ) - よし!妹殺そう!←…あっ!安心してください!痛いのいのじも声に出させずに地獄へ送りますからニコッ…ンフフ楽しみやなぁ!…これからも無理せずに頑張ってください-w (2019年7月5日 23時) (レス) id: e7791cc44f (このIDを非表示/違反報告)
滅月(プロフ) - ちょぎ…かっこいい…好き… (2019年6月26日 6時) (レス) id: 0b47fc3e16 (このIDを非表示/違反報告)
旅人(プロフ) - コメ失礼します、私の初期刀も文系雅さんだから最初からウルっときちゃいました…読みやすくてストーリーも面白くてとっても好きです! 続きを楽しみに待っています!無理のないよう、更新頑張ってください(*´ω`*) (2019年6月23日 21時) (レス) id: 3bb4a78592 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっけ - とてもおもしろいです!これからも更新頑張ってください! (2019年6月23日 14時) (レス) id: ea2e6a2a17 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:避雷針 x他1人 | 作成日時:2019年6月21日 21時