十八話 文芸部? ページ21
「これからこの部屋が我々の部室よ!」
両手を広げてハルヒが重々しく宣言した。
その顔は神々しいまでの笑みで彩られていて、俺はそういう表情を教室でもずっと見せていればいいのにとか思ったが言わず。
「ちょい待て。どこなんだよ、ここは」
「文科系部の部室棟よ。
美術部や吹奏楽部なら美術室や音楽室があるでしょ。
そういう特別教室を持たないクラブや同好会の部室に集まってるのがこの部室棟。
通称、旧館。この部屋は文芸部」
「じゃあ、文芸部なんだろ」
「でも今年の春に三年が卒業して部員ゼロ、
新たに誰が入部したいと休部が決定した唯一のクラブなのよ。で、このコが一年生の新入部員」
「てことは休部になってないじゃないか」
「似たようなもんよ。一人しかいないんだから」
呆れた野郎だ。こいつは部室を乗っ取る気だぞ。俺は折りたたみテーブルに本を開いて読書にふける文芸部一年生らしきその女の子とその隣で漫画を読むキリを見る。
キリはともかく、眼鏡をかけた髪の短い少女である。
これだれハルヒが大騒ぎしているのに顔を上げようともしない。
たまに動くのはページを繰る指先だけで残りの部分は微動だにせず、俺たちの存在を完璧に無視してのけている。
これはこれで変な女だった。
「あの子はどうすんだ」
「別にいいって言ってたよ」
と今まで会話に入ってこなかったキリが言う。
「本当かそりゃ?」
「昼休みに会ったときに。
部室貸してって言ったら、どうぞって。本さえ読めればいいらしいよ。
変わってるって言えば変わってるね」
お前が言うな。
俺はあらためてその文芸部員を見る。
白い肌に感情のない顔。キリのボブカットをさらに短くしたような髪がそれなりに整った顔を覆っている。
どこか人形めいた雰囲気が存在感を希薄なものにしていた。
しげしげと眺める俺の視線をどう思ったのか、その少女は顔を上げて眼鏡のツルを指で押さえてレンズの奥から闇色の瞳が俺を見つめる。
その目にも、唇にも、まったく何の感情も浮かんでいない。
デフォルトの無表情である。
「長門 有希」
と彼女は言った。聞いた三秒後には忘れてしまいそうな平坦な声で耳に残らない声だった。
長門有希は瞬きを二回するあいだぶんくらい俺を見るとそれきり興味を失ったように読書に戻った。
「長門さんとやら、こいつはこの部屋を何だか解らん部の部室にしようとしてんだぞ、それでもいいのか?」
「いい」
長門有希はページから視線を離さずに答える。
十九話 長門 有希→←ー番外編ー キリに聞いておきたい事を聞いてみた。
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藤凛ゆきな(プロフ) - 面白かったです!これからもぜひ更新続けてください! (2022年4月28日 0時) (レス) id: 01a5a3bde5 (このIDを非表示/違反報告)
こんそめちゃん。 - 里奈さん» いえいえ、大丈夫ですよ!お元気なようでよかったです、更新楽しみにしてました。ありがとうございます! (2019年12月19日 1時) (レス) id: 6cb14b9d6b (このIDを非表示/違反報告)
里奈(プロフ) - あかずきん。さん» 返信が大変遅くなってすみません!面白いといっていただけてとても嬉しいです...!ありがとうございます、頑張ります! (2019年11月23日 23時) (レス) id: 9872b3e3c5 (このIDを非表示/違反報告)
里奈(プロフ) - こんそめちゃん。さん» 返信が大変遅くなってすみません!リクエストありがとうございます!四人の絡みシチュエーションのリクもありましたらどうぞ、、、(もう見てないかもしれないので思いうつき次第上げさせていただきます) (2019年11月23日 23時) (レス) id: 9872b3e3c5 (このIDを非表示/違反報告)
里奈(プロフ) - 紫猫@東方厨さん» 返信が大変遅くなってすみません!ありがとうございます!!更新がんばります! (2019年11月23日 23時) (レス) id: 9872b3e3c5 (このIDを非表示/違反報告)
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