泣いた先の向こう [鬼滅の刃]

#41 ページ42

夕刻六時

辺りが暗くなり、遊女がより一層賑やかになる時間

ときと屋はいつも以上に賑やかだった

「こりゃ美しい！」

「美人だなぁ！」

「何処で見つけたんだよ女将！」

「女将の目に狂いはねぇな！」

ときと屋に来た客の男達は大盛り上がり

数人の男性に囲まれ話の幅等を広げる

『今日からときと屋にお世話になります、Aと申します。まだまだ未熟なので、先輩方やお客様にご迷惑が掛からないよう気を付けます』

「迷惑なんか掛からねぇよ！遊廓に来て不安だろうが、何かあれば女将や鯉夏花魁に相談するといい。それに、事が目的で来る奴ばかりじゃない。俺なんかそうだ、女房が2年前に死んじまってな。女房は元々遊廓に居たのを、俺が引き取ったんだ」

『引き取るのには、かなりの額が必要では？』

「こう見えても結構稼ぎはいい方だからな。一目惚れだった、一生を添い遂げたかったよ…だからな、アンタら見てると、女房を思い出してつい話し掛けたくなっちまうんだ。辛くねぇか、苦しくねぇか、ってな」

『そうだったんですか、とても素敵な方だったんですね。こんなに想われて、奥さんはきっと幸せだったと思いますよ』

「そうだといいがなぁ……そうだ、アンタ想い人はいないのか？遊廓っていっても、好きな奴がいても売られる奴は山ほどいる。辛い想いはしてねぇか？」

『(何かこんなに心配して貰って申し訳ないな…)えぇ、とても素敵な想い人がいます！』

「どんな奴だい？アンタが惚れるんだ、よっぽどいい男だろう」

『そうですねぇ、物静かな人です。いつも私の身を案じてくれます、幼い頃はよく海辺で遊びました。今は少し変わったお仕事をしていますが、それでもやっぱり素敵な方です』

「熱弁するねぇ！早く此処から出られるといいな、アンタは何だか自分の娘みたいで可愛い。きっと、幸せになれるさ」

『えぇ、ありがとうございます！』

#42→←#40

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す