保健室 ページ15
ちょうど私の体の火照りが収まった頃に、私と千空は保健室に着いた。そして私は保健室のソファーに座らされた。
どうやら先生はいないらしく、保健室の先生に代わって、千空は何かをいそいそと探している。恐らく体温計だと思うが、さっきまでの落ち込んでいた千空はなんだったのだろうか。そうまた疑問に思ったが、
「あ、あったあった」
口を開く前に千空がお目当ての物を見つけたようだった。
「おら、これで体温測れ」
ぽいと投げられたのはやはり体温計。熱があってだるいわけじゃないのに…と心の中でつぶやいたが、ここまで連れて来られたし、きっと測るまで解放してくれないだろう、と私は言われた通り測ることにした。
ピピピピッ −−36.4℃−−
「だから大丈夫って言ったでしょ。平熱だよ、平熱」
ほらと千空に体温計を見せる。
「ったく。心配して損したな……」
はぁと千空はため息をついた。
逆になんでこのくらいで心配されるっつーの。こっちが聞きたいよ。
千空はたまに口は悪いが根はいいやつだ。だからきっと誰にでもこういうことをしているんだろうな。私だけとか、そんなわけ……
「じゃあなんだ?体がダルくて重い……」
私がそんなことを考えている間に千空も話し始める。
「あ゛ー、あれか?もしかして生r」
「違うよ?」
速攻、私が笑顔で返すと、目が笑ってねぇよと千空が少し引いていた。
言うと思った!言うと思いましたー!と私は脳内で千空をど突く。
「ほんとに容赦ないね、千空!普通そういうこと女子の前で言うもんじゃないよ!?」
そう私が千空に説教をしていると、千空はどかりと私の横に座った。こいつ…絶対に聞いてないぞ……
「んなもん知らねぇよ。女子にはみんな来るもんだろ?何恥ずかしがってんだよ。つーかA、お前元気じゃねぇか」
といつものように耳をかっぽじる千空。
「おかげさまで元気になりましたよ!ご心配どうもありがとうございましたー!!」
もうなんなのと思いつつ、私は千空に体温計突き返した。そして念を入れておく。
「ていうか、本当に女子の前でそういうこと言うんじゃないよ!?わかった!?」
すると千空は
「へーい」
と目をそらして笑って言った。絶対にわかっていない。クククと笑うと同時に謎の前髪らしきものも揺れる。不意に、その笑顔にドクンと胸が音を立てた。
無邪気に笑う彼が私は好きだ。いつも笑うときとは少し違う純粋な笑顔。それを誰にも見せたくないと思うのは、わがままだろうか。
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のの - おもしろすぎませんか? (2022年4月26日 19時) (レス) @page50 id: 39b5b02acb (このIDを非表示/違反報告)
鳥ゐ(とりい)(プロフ) - Nebelさん» コメントありがとうございます!こうして言葉として感想をいただけるのは、より嬉しくなりますね!これからも頑張ります!!! (2021年1月30日 23時) (レス) id: e1991bef49 (このIDを非表示/違反報告)
Nebel(プロフ) - 初コメ失礼します!ワイはこの手の話が大好きなんで、心情舞い上がっております(笑) 続きも楽しみにしています!頑張ってください!( `・∀・´)ノ (2021年1月28日 0時) (レス) id: 758ebcb85a (このIDを非表示/違反報告)
鳥ゐ(とりい)(プロフ) - スモモさん» そう言ってもらえて嬉しいです!ありがとうございます!! (2021年1月7日 23時) (レス) id: e1991bef49 (このIDを非表示/違反報告)
スモモ - ヴっ!!!いい!すごくいいっ! (2020年12月1日 22時) (レス) id: ba34499442 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鳥ゐ(とりい) | 作成日時:2020年8月7日 22時