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りこん ページ44

そのすぐ後、お母さんとお父さんはりこんした。

わたしはお父さんの方に行き、お母さんはどこかに行くことになった。

お母さんが家を出ていく時、わたしは自らをふるい立たせてお見送りをした。

お父さんはショックだったのか、お母さんのお見送りをしないでいたけれど。


「ねぇ、これからどこに行くの?」


じゅんすいな質問だった。

しかしその質問をしたあと、お母さんはわたしをどなっていた時みたいに顔をゆがませた。


「遠いところに行くのよ」

「また会えるかな?」

「…そうね。きっと」

「じゃあ、さみしくないね」


そう言って笑ってみせたら、お母さんはしゃがみ込んでわたしのことをいきなりだきしめた。

いたくて、どこか悲しくて。

はなれたくなかった。

どなってすむならどなってほしかった。

けれどわたしたちには時間は有げんなもので。

お母さんはわたしを一なでしてから、わたしからはなれて言った。


「幸せになって」


それが、お母さんがわたしに向かって言った最後の言葉だった。

どなるわけでもなく。

優しく。







その後からだ、お父さんがおかしくなったのは。

お母さんがどならなくなった代わりに、お父さんがわたしの事をよくたたくようになった。

理由は分かってた。

お母さんが居なくなって、さみしかったんだ。

ショックでどうしようもなくて、その悲しみをわたしにぶつけていたんだ。

それが分かっていたからこそ、わたしは何もていこうしないでそれを受けていた。

わたしも、さみしかったから。

その気もちがよく分かるから。


もう、一人にはなりたくなかったから。







一年ほどが過ぎた、ある日の晩。

月明かりが綺麗で、目を細めていた日だった。


お父さんに呼ばれて、リビングに足を踏み入れた時、お父さんは私の上に乗っかってきた。


そして、私の首に己の手をかけて首を締めてきたのである。


その時は流石に抵抗した。

けど直ぐに視界がボヤけて、私は床に崩れ落ちた。

頭が思うように動かなくて、辛うじて目線だけをお父さんの方に向けて、私は見てしまった。


月明かりに反射する、刃を。

煌々と光る、包丁を。

笑いながら泣いている、お父さんの顔を。


あぁ、どこで選択を間違ったのだろう。

何がいけなかったんだろう。

薄れゆく意識の中、ずっとそれだけを考えていた。









一人に、しないでほしかった。


いっそのこと、一緒に。

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新美悠華@文アル大好き💛 - リクエスト良いですか?夢主ちゃんが死にたがってたらを秋声君と志賀さんで御願いして良いですか? (2023年3月19日 9時) (レス) @page25 id: 5309fc8273 (このIDを非表示/違反報告)
新美悠華@文アル大好き💛 - 秋声のどこが地味なん検討つかへんやるときはやる人なのにね (2023年3月19日 9時) (レス) @page10 id: 5309fc8273 (このIDを非表示/違反報告)
法蓮草(プロフ) - 朔さん» リクエストありがとうございます!!全然大丈夫ですよー!!私も坪内先生と司書ちゃんの絡み見てみたいですから!wwもう作品がいっぱいになっちゃったので次の作品で書いちゃいますね! (2018年7月15日 7時) (レス) id: 6397094652 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 長文失礼しました。 (2018年7月15日 2時) (レス) id: f66b36a2fa (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - いつも更新楽しみにしています!!毎回毎回とても面白くて大好きです...!リクなのですが、テーマは何でもいいので坪内逍遙と司書ちゃんを絡ませてほしいです...!無理でしたら大丈夫なんです!!これからも更新頑張ってくださいね!! (2018年7月15日 2時) (レス) id: f66b36a2fa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:法蓮草 | 作成日時:2018年5月28日 22時

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