海辺〈小林多喜二〉 ページ39
波の音が聞こえる。
足を歩ませると、ザッザッという音を出していた。
そう、砂浜を歩いているのである。多喜二と一緒に。
あの後、焼きそばを食べ終わってから祭りの場所が海に近いがために私は多喜二を海辺にまで行こうと提案してみたのだ。
『ごめんね！いきなりこんなところに来ちゃって』
多「ううん、俺も来たかったし」
そんな会話を続けながら歩いていたら、多喜二がふと止まって足元にある何かを掴んで見せた。
白い少しすべすべした何か。
多「貝殻だ」
『おぉ、よく見つけたねぇ』
月明かりも満足にないほどの視界の中見つけられるなんて…さては多喜二、目いいの？
私は資料と本の大打撃で目が悪くなる一方なのに…！
ぐああああっと言った感じにショックを受けたら、多喜二は思い出したかのように言葉を紡ぎ始めた。
多「そうだ、この間はごめん」
『この間…ああ、あの時ね』
私はそう言ってこくこくっと頷いた。
『そんな、私の方こそごめん。カッとなって』
多「いや、Aは悪くないよ。大切なAを傷つけた俺が悪いんだ」
『えぇ？私の方も悪いと思うんだけどなぁ…』
こう言い始めたらキリがないことを私は知っている。そして多喜二も知っていたらしい。
二人ともそこで会話を止めて、一回冷静になってみた。この間のようにいきおいで口論しないように。
そしたら、二人同時に吹き出して笑った。
二人ともこう思ったんだろう。
【これじゃあまるで、子供の喧嘩みたいだ】
そして実際その通りだと思う。
『じゃあ、二人とも悪かったって事で！』
多「うん、その方が丸く収まりそうだな」
両者共に一致。これで問題は無いだろう。
考えてみれば多喜二と私の仲だ。こんな事で一生ギクシャクした関係になんかならない筈。
…多分？
私はそう思いながら曇り空で星が見えない空を仰ぎ見て、多喜二に声をかけた。
『ね、多喜二。織姫と彦星、会えたかな』
多「会えたんじゃない？きっと。Aはどう思う？」
『私も会えたと思うよ。だって空の上は、何時も晴れだからね。天候で左右させることは無い』
至極最もな事を言ってしまったが、もう一つ言えることがある。これは、私の経験上からだけど…。
そう思いながら波が打つ音をゆったりと聞いた後、ポツリと口に出した。
『それに、優秀すぎる鵲達が必ず自分の身近にいるって事を私は知ってるからね』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 40人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
新美悠華＠文アル大好き💛 - リクエスト良いですか？夢主ちゃんが死にたがってたらを秋声君と志賀さんで御願いして良いですか？ (2023年3月19日 9時) (
レス) @page25 id: 5309fc8273 (このIDを非表示/違反報告)
新美悠華＠文アル大好き💛 - 秋声のどこが地味なん検討つかへんやるときはやる人なのにね (2023年3月19日 9時) (レス) @page10 id: 5309fc8273 (このIDを非表示/違反報告)
法蓮草(プロフ) - 朔さん» リクエストありがとうございます！！全然大丈夫ですよー！！私も坪内先生と司書ちゃんの絡み見てみたいですから！wwもう作品がいっぱいになっちゃったので次の作品で書いちゃいますね！ (2018年7月15日 7時) (レス) id: 6397094652 (このIDを非表示/違反報告)
朔(プロフ) - 長文失礼しました。 (2018年7月15日 2時) (レス) id: f66b36a2fa (このIDを非表示/違反報告)
朔(プロフ) - いつも更新楽しみにしています!!毎回毎回とても面白くて大好きです...!リクなのですが、テーマは何でもいいので坪内逍遙と司書ちゃんを絡ませてほしいです...!無理でしたら大丈夫なんです!!これからも更新頑張ってくださいね!! (2018年7月15日 2時) (レス) id: f66b36a2fa (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：法蓮草 | 作成日時：2018年5月28日 22時
