帝國図書館日乗！【彼岸花】

戯〈江戸川乱歩〉＊黒渦影籠様リク ページ25

『ふむ』


やばい、暇すぎて溶けそう。

そう思っていた昼下がりの或る日。




事件が起こった。




「呼びましたか！Aさん！！」


元気な声が聞こえてきたと思ったら、窓から軽い身のこなしで乱歩先生が入ってきた。

窓から、軽い身のこなしで。


『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ？！！！！！！』


驚きすぎて近くにあった猫のぬいぐるみを乱歩先生に向かって投げつける。

しかしひょいっとかわされた。


『なななな、何て所から入ってきてるんです？！』

乱「おや、之は失礼。今度からはキチンと椅子から登場しますね」

『それはキチンとしてないわッ！あほんだら！！それに呼んでないですって！！』

乱「はて？暇だと仰った筈ですが…？」

『心の中まで覗かんでくださいッ！！』


開始一分ほどで既に平凡とは無縁の感じになってしまったが、これで終わらないのが乱歩先生である。

乱歩先生はニヤッと笑いマントに手を伸ばした。

室内で花火か？それともびっくり箱か？

しかし出された物を見た時は違う事で目を丸くした。


『…え、これって』

乱「皆様お馴染み、ポッキーです。Aさんはプリッツ派でしたか？」

『あったら何方も食べる派ですかね』


好き嫌いは激しいけど食べられるものはとことん食べる性格ですし。

…いやッ！！！そうじゃなくて！！！！


『何でポッキーなんですか？！！』

乱「Aさんはプリッツよりポッキー派だと思いましたので」

『あ、考慮してくれたんですね。ありがとうございます〜…じゃなくてッ！！！』


何で暇だって言ってたのにお菓子なの？！普通の乱歩先生なら遊戯類出すと思ってたのに！

しかし乱歩先生は慣れた手つきでポッキーの袋を破き…そのまま私の口に突っ込んだ。


『むぐぅっ！』


何事じゃ？！

一言反論してやろうと前を見据えて、気がつく。


…乱歩先生…近くね？


『…？！！！！』


顔面偏差値が高い人をここまで凝視したことはないのではないだろうかっと思えるくらいにまじまじと見られる。

近い近い近い近い。



流石に、照れるわ。




『んぎゃぁぁぁぁぁ？！』


乙女には似合わない声を絞り出し、ポッキーを勢いよく折って乱歩先生の方を見ると。


乱「…ふむ」


なんでそんなにつまらなそうな顔してんですか。貴方あと少しで人一人殺すところでしたよ。

こちとら三途の川が見えそうになったのに。









乱「…もう少し先もやってみたかったんですがねぇ」

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