慰謝〈徳田秋声〉*亜紀人様リク ページ20
「A」
薄暗い部屋の中、扉の向こうから声が聞こえてきたので私はゆっくりとベットから身体を起こした。
扉には鍵はかけていない。
しかし皆気を利かせて扉越しで会話してくれる。
今日は秋声らしい。
『…何』
秋「何って。A、ここ数日マトモに食事してないみたいじゃないか」
『お、お腹空いてないから』
秋「君に限ってそれは無いよ。何時も成人男性が食べる量をぺろりと食べちゃう君が」
…それは気にしてるから触れないで欲しかった…。
いや、確かにお腹は空いている。
けど今皆に顔を合わせたらどんな顔をすればいいのか分からないのだ。食堂なんて文豪さんがいっぱいいるし…。
『行きたくない…』
我儘だって分かっている。許して欲しい。
すると扉の向こうから大きく溜息を吐く音が聞こえた。紛れもない秋声が吐いたのだろう。
秋「ま、Aならそう言うと思ったよ。だから…」
秋「僕と一緒にAの部屋で食べよう」
『…へ?ここで?』
秋「そこで」
『秋声と?』
秋「僕と」
マジか。
『…いや、別にいいけど…食べ物ないよ?』
秋「あぁ、そこは大丈夫。食堂からもう持ってきたから。で、入っていいかい?」
『…ん、どうぞ』
すると扉がガチャっという音を立ててゆっくりと開いた。久しぶりの光に少し目を細める。
秋「…わ、暗い。電気つけなよ」
『そんな気分じゃないの』
そう言うと、秋声は深くを追求せず「そっか」っと言って私の隣に腰掛けた。
そしてプレートの上に乗っている汁物を寄越す。
しかしその汁物を目にした時、今まで沈んでいた気持ちが少し持ち上がった気がした。
『…治部煮…!』
秋「そ、上手く作れてなかったらごめん。でもこれでいいならAの気持ちが落ち着くまで作るから」
『…え?まさか秋声が作ったの?』
秋「?そうだけど」
ほんながけ?!
謎の敗北感を味わいながら治部煮を一口すくって食べてみると、途端にお婆ちゃんに会いたくなった。
故郷の味がしたからだ。
『…美味しいです』
秋「よかった」
秋声はそう言ったが、私の方を見て治部煮を食べようとしていた手を止めた。
そして少し迷った素振りをした後、ゆっくりとギクシャクしながら私を抱きしめる。
温かい。
人肌が懐かしい。
秋「…大丈夫、大丈夫。どんなAでも、皆受け入れてくれるよ」
あぁ、もう…らしくないことは止めてよ…。
泣きそうになるじゃないか。
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新美悠華@文アル大好き💛 - リクエスト良いですか?夢主ちゃんが死にたがってたらを秋声君と志賀さんで御願いして良いですか? (2023年3月19日 9時) (レス) @page25 id: 5309fc8273 (このIDを非表示/違反報告)
新美悠華@文アル大好き💛 - 秋声のどこが地味なん検討つかへんやるときはやる人なのにね (2023年3月19日 9時) (レス) @page10 id: 5309fc8273 (このIDを非表示/違反報告)
法蓮草(プロフ) - 朔さん» リクエストありがとうございます!!全然大丈夫ですよー!!私も坪内先生と司書ちゃんの絡み見てみたいですから!wwもう作品がいっぱいになっちゃったので次の作品で書いちゃいますね! (2018年7月15日 7時) (レス) id: 6397094652 (このIDを非表示/違反報告)
朔(プロフ) - 長文失礼しました。 (2018年7月15日 2時) (レス) id: f66b36a2fa (このIDを非表示/違反報告)
朔(プロフ) - いつも更新楽しみにしています!!毎回毎回とても面白くて大好きです...!リクなのですが、テーマは何でもいいので坪内逍遙と司書ちゃんを絡ませてほしいです...!無理でしたら大丈夫なんです!!これからも更新頑張ってくださいね!! (2018年7月15日 2時) (レス) id: f66b36a2fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:法蓮草 | 作成日時:2018年5月28日 22時