10話 ページ10
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焦ったような声とともに腕を掴まれて、再び私のぼろぼろの顔が露わになった。
視界に彼が映り込む。
そりゃそういう声が出るだろうという感想が湧くような、驚愕しきった表情だった。
妥当だと思う。
声をかけた女がぼっろぼろ泣いてたらそりゃびっくりする。
私だったらもっと狼狽えてる。
彼は比較的落ち着いてる方だ。凄いな。
なんて、こんな的外れな感想今はいい、それよりも。
丁寧に溶かしこんだような黒い瞳だった。
光に透かせば深緑のようにも見える。
そこにくっきりと映り込む、やっぱりぼろぼろでぐずぐずな私を見つけて、何だか申し訳なくって。
「ごめんなさい……」
気づけばつるりと言葉は漏れていた。
困らせている。
驚かせている。
焦らせている。
それから、ダメと言われたことをしたことに対して。
そんな意味があったんじゃないかと思う。
だけど彼は、まあこれだけで伝わるはずがないんだけど、分からなかったようで。
何故謝られたのかと、黒くて綺麗な目を斜め下へと動かした。
「えっ、と……これ使ってください」
瞳を私へと戻した彼は、今度は困ったように眉を下げて、制服のズボンのポケットをまさぐった。
すい、と渡されたのはハンカチだった。
薄手の紺のハンカチ。清潔そうに丁寧に畳まれていて、それがまた余計に申し訳なかった。
「いいですそんな……大丈夫なので、ほんと」
「いいから。大丈夫に見えなかったから声かけたんですし」
「うっ」
痛いところ突いてくるなあ。こういうの鋭い人なんだ。
いやでも気が引けるし……と思考がぐるぐる回り始める。
だってただでさえ迷惑かけてる。
その自覚がある。ちゃんと、私には。
泣いてる女の対応なんて絶対困るし面倒くさいだろうに。
嫌そうな顔をしたりはしていないけれど、そこが彼の優しさだったりするんだろうか。
一向に受け取らず渋っている私を暫く無言で眺めた後彼は、
何を思ったのか突然しゃがんだ。
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飛鳥(プロフ) - シェルファさん» コメントありがとうございます!お待たせしてしまい申し訳ありません今公開しました!引き続きよろしくお願いします! (2019年6月30日 15時) (レス) id: d93720a371 (このIDを非表示/違反報告)
シェルファ(プロフ) - あー、早く続編が見たいです! (2019年6月30日 11時) (レス) id: ed405ee373 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:飛鳥 | 作成日時:2019年5月4日 23時