9話 ページ9
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あまりにも苦しかった。
嫌悪感と罪悪感が体のずっとずっと奥からせり上がってきて、喉を熱くする感覚。
息をすることさえ阻まれるようで、とても、
とても我慢なんて出来そうになかった。
意志とは全く無関係に質量を持っていく目のふちの熱がじわりと溶けだす。苦しい。
いやだ。
人のいない方へ行かなくちゃ。
滅多に人の通らない中庭に蹲っていた時間はいったいどれくらいだったんだろう。
小さくなって、誰も見ないでって。
人が来るなんて、思ってなかった。
「あの……大丈夫ですか?」
え。
もう殆ど条件反射。獣か私は。
びっくりしたけれど掠れすぎて声は出なくて、でも叫ばなくて良かったって思う。
がばっと顔を上げた反動で涙が沢山零れていった。
けれど、そのおかげで彼の顔が良く見えた。
あ、綺麗。
何がかは分からない。部分的なことじゃなくて、もっと大きな感じで。
心配そうで、でもちょっと困ってるみたいな黒くて優しい姿が、漠然と、綺麗だと思えた。
こんな人いたんだ。
誰だろう。先輩かな。
いろんなことを考えて、彼は彼で何故か面食らったように動かなくて、お互いの顔を見つめ合ってた。
傍から見れば何してんのって感じだけど。
でも私は気づいた。
自分の制服の袖が濡れてるのを見て。
そうだ私今泣いて……!
うわ恥ずかしい。なんでぼけっとしたんだろう。いやそれはこの人が綺麗だったからだけど。
いやそうじゃなくて。
慌てて腕で顔を覆い隠す。
とまれとまれ、と念を込めて、見られないように涙を拭いた。
けどすぐに止められた。
「あ、ちょ、擦ったらダメ」
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飛鳥(プロフ) - シェルファさん» コメントありがとうございます!お待たせしてしまい申し訳ありません今公開しました!引き続きよろしくお願いします! (2019年6月30日 15時) (レス) id: d93720a371 (このIDを非表示/違反報告)
シェルファ(プロフ) - あー、早く続編が見たいです! (2019年6月30日 11時) (レス) id: ed405ee373 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:飛鳥 | 作成日時:2019年5月4日 23時