32話 ページ32
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そんな私が全てを知ったのは高校に入学して半年たった頃。
あの日、赤葦と出会った日の朝のことだ。
彼とは別々の高校に進学したこともあって、次第に疎遠になっていった。
お互い高校生として忙しくやっていたし、そもそも学校が正反対の場所にあるから会うはずもない。
秋を迎える頃には連絡も一切しなくなって、いわゆる、自然消滅ってやつなんだろう。
私は私で彼のことを思い出すこともなく、同じクラスになった奈子と日々を過ごしていた。
告白される前までの日常に戻ったのだ。
でもあの日の朝、それは破られた。
通学に利用している駅のホーム。
同じ中学の人もちらほら見かける中で、ばったりと出会ったのだ。
私を嫌った、彼女に。
相手はびっくりしてその場に立ち止まった。
私は目の前で立ち止まられたものだから何事かと足を止めた。
最初こそ目を見開いていたけれど、次第に彼女の眉間の皺は濃くなって、目つきは鋭く、私を睨んだ。
何も知らない私は、なんとなく見たことがある人だなあ、くらいの感想を抱いていた。
同じ中学の人でも覚えてられないような奴なのだ、私は。
彼女は低く、押し殺すように言った。
「…………あいつはどうしたの」
「誰のこと?」
「あんたと付き合ってたやつ!」
「あぁ、えっと……どうして?」
彼女は酷く傷ついたように顔を歪めた。
そのままぶちまけられた彼女の悲壮な思いが、真実だった。
私はずっと、今でも好きなのに。
なんであなたなの?
ちょっと顔が良いからって!
ずっと思ってる私は捨てられて、好きでもないあなたが選ばれるなんて理解できない。
何も知らないって何?
気がつかないなんて信じらんない!
何も知らずに振り回されてきた私もあいつも馬鹿みたいじゃない!
中途半端にいい顔ばかりして、涼しい顔でよくもっ……
そこまで言って、とうとう瞳から涙を零した。
悔しそうに息を切らす姿が、焼き付いて離れなくて。
何一つ知らない事実と、初めてかけられた言葉に、ショックを受けた。
ただ呆然として、その場に立ち尽くして、まだ理解しきれない頭でとりあえず学校行かなきゃとぼんやり思った。
なんでこんなに上手く頭が回らないんだろうって疑問だった。
前にお姉ちゃんが言っていたことを思い出してた。
Aちゃんは不測の事態に弱いから気をつけて。
一番苦手なのは、臨機応変、だから。
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飛鳥(プロフ) - シェルファさん» コメントありがとうございます!お待たせしてしまい申し訳ありません今公開しました!引き続きよろしくお願いします! (2019年6月30日 15時) (レス) id: d93720a371 (このIDを非表示/違反報告)
シェルファ(プロフ) - あー、早く続編が見たいです! (2019年6月30日 11時) (レス) id: ed405ee373 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:飛鳥 | 作成日時:2019年5月4日 23時