19話 ページ19
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眠そうな目に、癖のある髪。
明と暗が綺麗に落ちる。
「ありがと赤葦」
「な、なにに……?」
「赤葦のおかげで私は今頑張れてるから、だから、ありがとう」
「大したことした覚えないけど……どういたしまして?」
唸り続ける赤葦が可笑しくて、あー、楽しい。
楽しいけど、もう家だ。
「ここだよ、私の家」
「あ、へぇ。綺麗だね」
「そう?…じゃあ、わざわざありがとう。気をつけて帰ってね。…………赤葦?」
呼びかけても返事は返ってこない。
表札をじぃっと眺めてる。
どうしたんだろう、表札変かな?
そんな珍しいデザインでもないと思うけど。
赤葦?ともう一度呼ぶと、今度は目が合った。
門灯のオレンジが、柔らかく映っていた。
「A」
「な、なんでしょう」
「連絡先、教えて欲しい」
連絡先。
頭の中で反芻する。
何があるのかと緊張してしまっていたから、ちょっと拍子抜けした感じ。
テレビの向こうで芸人さんがずるりと滑るイメージを急いで消して、
「いいよ。えっと、ちょっと待って。今日スマホ見た記憶が無い」
「ちゃんと携帯しなよ。じゃないと携帯という名前が泣く」
「泣かせてごめんね」
「許す」
赤葦って真顔で冗談言う。悪ノリも結構する。ただし真顔。
人の事言えないんだけどさ。
鞄をまさぐって、筆箱の下敷きになっているのを救出。そういえば昨日入れてから出してあげてないような。
ごめんねでもちゃんと携帯はしてた。一応。
落ちてた電源を入れて自分の連絡先を表示し、液晶を赤葦へと向けた。
自分もスマホを取り出した赤葦はさっとそれを読み込んで「できた」と一言。
数秒して、通知が光る。
赤葦京治。フクロウ、だよねこのアイコン。
「かわいい……」
「うちのバレー部みんなそんなん。安直だよね」
肩を竦めてみせるけど、赤葦もそれに合わせてるんだよね?
「じゃあこれで。後で連絡する」
「あ、うん。気をつけて、ばいばい」
帰れるか心配で暫く見てたけど、きちんと正しい所で曲がってくれた。よかった。
数時間後、お風呂上がりにスマホを開くと、赤葦からメッセージが来ていた。
今日の自主練のお礼と労いとおやすみ。
それだけなんだけど、それだけが赤葦らしくて。
嬉しくて、空飛べそう、と呟いたら帰ってきたお姉ちゃんに不思議そうにされた。
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飛鳥(プロフ) - シェルファさん» コメントありがとうございます!お待たせしてしまい申し訳ありません今公開しました!引き続きよろしくお願いします! (2019年6月30日 15時) (レス) id: d93720a371 (このIDを非表示/違反報告)
シェルファ(プロフ) - あー、早く続編が見たいです! (2019年6月30日 11時) (レス) id: ed405ee373 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:飛鳥 | 作成日時:2019年5月4日 23時