15話 ページ15
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「あ、赤葦こっち」
きょろきょろ、部室から出た赤葦が周りを見渡してるのを見つけて声をかける。
私を探してるの姿がなんだか可愛いとか思っちゃったりして。
少しの間そのまま眺めてたのは内緒の話だ。
「ごめん。遅くなって」
「平気。着替えてるのかと思ったけどジャージのままだね?」
部活中に着ているシャツの上に梟谷排球部のジャージを羽織り、下はその長ズボンを履いて現れた赤葦。
私の問いに疲れた顔してため息をついた。
「木兎さんが部日誌全然書いてなくて……結局いつも俺が書くんだよな……」
「お、おつかれ」
僅かに笑った赤葦は、かえろ、と言ってゆっくり歩き出した。
私もその後を追って校門へ向かう。
すれ違う先生に挨拶をしながら学校を出て、なんとなくぽつりぽつり会話して駅に着いた。
会話が多いというわけではないのに、沈黙がいやじゃない。むしろ安心する。
赤葦も私もよく喋る方じゃないから、波長が合うのかもしれない。
そう考えると私と赤葦には共通点が多い気がした。
ちらり横目で隣を盗み見る。
手で口元を覆って、くわりと一つ欠伸を零していた。
眠いのかなと思うことは度々あったけど、今はいつにも増して眠そうだった。
疲れてるのかな。
そりゃそうか、木兎先輩の自主練ハードだし。
体力鬼だし。
朝練だってあるし、この後課題だの予習だのあるだろうし。
テストもうすぐだし。
……嫌なこと思い出した。
いいのかな、本当に。
なんだか申し訳ないような。
疲れてるのに無理をさせてないだろうか。
それなら早く帰って寝て欲しい。私を送ってないで。
気遣った方がいいのか、知らないふりをした方がいいのか。
分からない。
昔っから、人の心情を正しく読み取るのは苦手だ。
最近はなんとか、表情とかから判断出来るように成長したけど、やっぱりまだまだ足りない。
赤葦に突き動かされたあの日からの半年じゃ、これまでサボってきた分を取り返すのは難しい。
でも赤葦が優しいのはよく知ってるから、無理はしないでほしいな。
「……赤葦、本当に家まで送ってくれるの?」
「?うん送るよ。なに、嘘だと思ってるの?」
「そうじゃないけど…もう遅いし、わざわざ電車降りるなんて、」
「いいって。俺が送りたくてしてるの」
「それでもだめ?」と答えを分かっているように笑う赤葦は、ずるい。
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飛鳥(プロフ) - シェルファさん» コメントありがとうございます!お待たせしてしまい申し訳ありません今公開しました!引き続きよろしくお願いします! (2019年6月30日 15時) (レス) id: d93720a371 (このIDを非表示/違反報告)
シェルファ(プロフ) - あー、早く続編が見たいです! (2019年6月30日 11時) (レス) id: ed405ee373 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:飛鳥 | 作成日時:2019年5月4日 23時