1話 ページ1
・
彼女は一人、中庭で蹲っていた。
校舎の壁に背を付けて、膝を抱えて丸くなっていた。
その姿を見かけたのは、部活に向かう途中のこと。
具合でも、悪いんだろうか。
そんな思いが生まれてしまえば、見なかったふりをして通り過ぎるのは何となく嫌で。
……まあ、ちょっとくらい、遅れてもいいだろ。
そう言い訳をして、彼女の方へ足を向けた。
「あの……大丈夫ですか?」
「っ」
それは、ぽろり、ではなかった。
言うなれば、そう。
とろり、だ。
綺麗なヘーゼルの瞳が、真ん丸に見開かれて。
そこから、宝石が流れ落ちるように。
蜂蜜みたいに、ゆっくりと、
溶け零れていった。
時間が、永久的に引き伸ばされたみたいだった。
この日、俺は、名も知らぬ少女に恋をした。
もう一度会いたかった。
会って話したかった。
名前を聞きたかった。
けれど、いくら探してもなかなか見つからなかった。
他学年なのか、同学年だけれど階が違うのか、校舎が違うのか。
容姿だけ、という曖昧な手掛かりで探し出す難しさを思い知った。
そんなんで学年も変わってしまって、気を落としていた頃。
一年の入部後、初めての部活。
「今年からマネージャーをやらせていただきます。二年の白福Aです。よろしくお願いします」
ぺこり、目の前で頭を下げる、紛れもない彼女がいた。
・
132人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
飛鳥(プロフ) - シェルファさん» コメントありがとうございます!お待たせしてしまい申し訳ありません今公開しました!引き続きよろしくお願いします! (2019年6月30日 15時) (レス) id: d93720a371 (このIDを非表示/違反報告)
シェルファ(プロフ) - あー、早く続編が見たいです! (2019年6月30日 11時) (レス) id: ed405ee373 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:飛鳥 | 作成日時:2019年5月4日 23時