キール (ページ5)

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「えっ？」

何食わない顔で高級マンションに入っていく菊池。ゆっくり後をついていくと当たり前のように暗証番号を入力してる。

「えっ？どういうこと？」

「ここに住んでるだけ」

「嘘でしょ。高校生が住めるようなところじゃないでしょ」

「ちょっと甘いこと言えば皆金くれるよ」

あぁ、そうだ。思い出した。コイツはそういう奴だったっけ。

「最低だね」

「人間なんて自分のことしか興味無いよ。その人の為って言っても見返りを求めてる」

反論の余地も与えないような冷たい声で言う菊池。この人は一体何を抱えてるんだ。

何も言えず、菊池も何も言わない。ただ、冷たい風が通りすぎていく。

感情なんか無いって思ってた、、いや、今も思ってる。じゃあ、この気持ちは何？恋？いや、違う。同情？私が菊池に？これも違う。じゃあ胸を締め付けるこの感情は一体何？

分からない。どうやら考えすぎたみたい。喉に何かが引っ掛かったのが分かった。悟られないように口元を押さえてエントランスのドアを押した。菊池は追って来なかった。