キール (ページ3)

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「里沙」

授業が終わって教室に戻るなり、駆け寄って来るのは梨乃。梨乃とは小学生の時からの友達だ。唯一、私が心から信頼出来る人間。

「はい、これ」

差し出された梨乃の手には白い粒が二、三個乗っている。受け取って流し込む。

「落ち着いた？」

「うん。ありがと」

数年前から使ってる薬だ。精神安定の薬。壊れてしまった私は薬を飲まないと普通に過ごすことが出来なくなってしまった。

バッシャン。水の飛び散る音が後ろから聞こえた。振り返ると全身ずぶ濡れでしゃがみ込んで居る女の子とバケツを持ってニヤニヤ笑ってる三人組の女子達。誰も気に留めない。いつものことで処理してる。慣れほど怖いものは無いな。

「梨乃、終わったよ」

嬉しそうに私たちのところに来る三人。梨乃の取り巻きだ。モテる梨乃には誰も逆らわない。

「お疲れ。アイツも余計なことを言わなければ」

あの子はもともと私たちのグループの子だった。でも、私の悪口を言って梨乃の地雷に触れてしまった。ホントに不良品なんだとつぐつぐ思う。悪口を言われても泣きもせず、かといって止めようともしない。イジメられてる彼女を見ても何も感じない。

「里沙？どうしたの？」

梨乃に声をかけられる。意識を戻すと心配そうな顔の梨乃が居る。

「ちょっと考え事」

「何かあったら言って。出来ることはするから」

そういうと私の肩に手を回して歩きはじめた。気配り上手で優しい梨乃。感情の無い私には眩し過ぎる。